土星とエンケラドスの間に見られる電気的なやり取り
【2011年4月22日 NASA】
探査機カッシーニが、土星とその衛星エンケラドスとの間に電気的なやり取りが行われていることを発見した。木星と衛星イオの間でも同様のものが見られていたが、土星で発見されたのは今回が初めてのことだ。
土星には紫外線で観測できるオーロラが存在していることが知られている。このオーロラは電子やイオンが土星の極域に降り注ぐことによって発生するが、その電子やイオンが衛星から供給され、土星の北極と南極を衛星を介してつなぐ「回路」が形成されているのではないかと思われていた(画像1枚目)。
これまで土星の衛星エンケラドスには氷の火山が存在し、水や有機物などを土星近くの空間に放出していることが知られていた。これらが土星の磁場につかまって極域に降り注いでいると考えられていたが、そこから発生するオーロラのエネルギーは非常に小さく、観測できていなかった。
今回、カッシーニが行った紫外線の観測によって、エンケラドスから土星に粒子が降り注いで発生したオーロラが初めて発見された。
これは通常土星で見られる極を取り巻くようなオーロラとは違い、少し低緯度域のところにスポット状に観測されるもので、エンケラドスの公転周期と同じ速度で土星の周りを回っていること、そして非常に弱いエネルギーであることからエンケラドス由来であるとわかった。
土星の磁場は木星ほど強くはないものの、地球と比較すると非常に強く、その詳細な構造はよくわかっていない。磁場の構造を知る上で、磁場の影響を強く受けるオーロラを見ることは非常に有用である。
一方、エンケラドスのほうには氷の火山などによる物質の放出割合が一定であるかどうか議論があったが、今回の結果を見たところ割合は変化しているようだ。エンケラドスに対する理解にも影響を与えそうな発見となった。
カッシーニの位置と航路
天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」では、カッシーニやメッセンジャー、「はやぶさ」など、主な探査機15機の設定日時における位置や航路を表示することができます。