すばるがとらえた塵のリングと惑星存在の可能性

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【2012年1月12日 すばる望遠鏡

すばる望遠鏡が、「残骸円盤」と呼ばれる恒星を取り巻く塵のリングを撮影することに成功した。このリングの中心は恒星から少しずれており、まだ発見されていない惑星によってこの「ずれ」が起こっている可能性がある。


すばる望遠鏡が撮影した塵のリング

すばる望遠鏡が撮影した塵のリング。左下の白いバーは1秒角を表し、この天体の距離では約73天文単位になる(太陽から冥王星までの軌道長半径は約39.5天文単位)。クリックで拡大(提供:国立天文台)

観測対象となったのはHR 4796A(ケンタウルス座の6等星)という若い恒星の周りにある塵で、すばる望遠鏡に取り付けられた系外惑星の探査用カメラ「HiCIAO(ハイチャオ)」によって撮影された。恒星の周りにある「残骸円盤」と呼ばれる塵の広がりは、惑星の素になった微惑星が衝突して作られた塵が周囲にばらまかれることによって形成されると考えられている。多くの恒星で見られており、太陽系でも同様の塵が円盤状に分布している。

HR 4796Aで発見された塵の円盤は、その半径が冥王星軌道の2倍もの距離を持っており、きれいなリング状をしている(画像)。しかも中心の恒星からリングの内側までの距離が左右で異なっていることが確認された。ハッブル宇宙望遠鏡の観測により、リングの位置がずれている可能性はこれまでに指摘されていたが、実際に確認されたのはこれが初めてだ。

このようなリングのずれは、まだ発見されていない惑星によるものである可能性が高い。惑星が原因で中心のずれた塵のリングを作ることは、計算機シミュレーションで既に確認されており、みなみのうお座のフォーマルハウトでも、惑星と共存する中心のずれたリングが観測されている(参照:2005/07/01 - 「フォーマルハウトを囲む塵に潜む惑星?」)。

さらにすばる望遠鏡は、リングの端の様子まで映し出している。端の方がぼんやりとして何か吹き出ているように見えるのは、中心星からの光によって塵が吹き飛ばされているからだ。この画像は惑星の存在を示すだけでなく、塵の行く末もとらえていると言える。

この成果は恒星の円盤の研究と、系外惑星探査の研究を結びつける研究だと言えそうだ。

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