ハッブルが解き明かす、超新星爆発の原因

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【2012年1月17日 NASA

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した大マゼラン雲にある超新星残骸の画像に、「あるべきものがない」ことがわかった。この超新星残骸を生み出したのは、おそらく2つの白色矮星が衝突して起こったタイプのIa型超新星爆発のようだ。


今回対象となった超新星残骸SNR0509-67.5

超新星残骸SNR0509-67.5。「降着型」の爆発を起こした場合、残骸の中心近くに白色矮星が残っているはずである。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, CXC, SAO, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA), J. Hughes )

Ia型超新星は、白色矮星の質量が太陽の1.4倍を超えると不安定になって起こる大爆発現象だ。その真の明るさが全て一定とされるため、超新星が発生した遠方銀河までの距離を測るのに使われる。宇宙が加速的に膨張していることや、膨張の要因となるダークエネルギーの存在が明らかになったのも、このIa型超新星のおかげだ。

しかしIa型超新星爆発がどのようにして起こるのかというのは、まだよくわかっていない。主な仮説として、赤色巨星などと連星系を作っている白色矮星の上にガスが降り積もり、白色矮星の質量が大きくなった結果起こるという「降着型」の説と、白色矮星同士が合体してできる「合体型」の説があるとされている。

降着型の説であれば、爆発後に白色矮星の伴星が残っていると考えられる。超新星残骸の中心にそういった天体がないかどうか探すことによって、降着型と合体型、どちらのメカニズムによるものか区別することができる。

今回の研究対象となったSNR 0509-67.5は地球から17万光年離れた大マゼラン雲にある超新星残骸だ。この超新星残骸を撮影したハッブル宇宙望遠鏡の画像をよく調べてみたが、中心には元の伴星らしき天体が写っていなかった。もしこの爆発が降着型であれば、残った天体の明るさやハッブル宇宙望遠鏡の性能から考えると、何かしらの天体が写っているはずである。シャーロック・ホームズの名言「ありえない可能性を除いたときに最後に残ったものは、それがどんなに本当らしくなくとも、真実である」という言葉のとおり考えれば、この超新星爆発は白色矮星同士の衝突によるものでありそうだ。

この超新星爆発の記録は残されていないが、超新星爆発のときの光が周囲の星間ダストによってまるでやまびこのように反射し、およそ400年遅れで地球に届いて観測された。この光の解析から、SNR 0509-67.5がIa型超新星爆発によってできたものであると推測されている。SNR 0509-67.5は綺麗な球状をしているので爆発の中心を正確に求められたこと、また爆発が比較的最近のできごとなので中心に残された天体があったとしてもほとんど動いていないはずだと考えられることが、今回の発見へとつながった。

研究チームは大マゼラン雲の他の超新星残骸について同様の研究を行い、さらに検証を続ける予定である。