白色矮星のペアから重力波を間接観測

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【2012年9月7日 マクドナルド天文台

3000光年かなたにある白色矮星の連星の観測から、未だ直接検出されたことのない重力波の放射が間接的に確認された。アインシュタインの一般相対性理論による予測どおりの影響が見られている。


白色矮星の連星系SDSS J065133.338+284423.37

白色矮星の連星系SDSS J065133.338+284423.37の想像図(提供:D. Berry/NASA GSFC)

米・テキサス大学オースチン校の研究チームは昨年4月、非常に接近した白色矮星(恒星がその最期に外層を失って中心核だけとなっている天体)のペアが、13分以下という短い周期で互いの周囲を回っていることを発見した。

有名なアインシュタインの一般相対性理論では、動く物体によって空間にかすかなさざ波が立つ「重力波」が発生すると予測しているが、これまでに直接観測されたことはない。お互いすぐ近くを回り合う連星系では重力波によってエネルギーが持ち去られることから、星同士が徐々に近づき、公転もどんどん速くなる。アインシュタインの理論に基づけば、この連星系の公転周期は、1年に0.25ミリ秒ずつ小さくなる(縮まる)はずだ。

この連星系を地球から見ると、さながら正確な時計のように6分ごとに食を起こしている。最近行われた同チームの再観測により、昨年に比べて食が6秒以上早いタイミングで起こっていることがわかった。2つの星が接近しつつあること、さらに公転周期が1年にほぼ0.25ミリ秒ずつ短くなっていることが確認されたのだ。

研究チームでは、2013年には食が2011年に比べ20秒以上早くなると予測しており、やがて2つの星は合体すると見られている。今後公転周期が短くなるようすを観測しつづけることで、星同士の合体に重力波がどのような影響を与えるかについて理解が深まると思われる。

今回の連星からの重力波を直接とらえるには、数百万km隔てた距離にある2つの衛星がお互いに向けてレーザーを照射して影響を測定するといった実験が必要になるが、今のところそのような計画はない。今回行われた公転周期の変化の観測は、間接的ではあるものの、重力波の放射をより簡単に調べる方法なのだ。