ハッブルが明らかにしたリング星雲の3次元構造
【2013年5月28日 HubbleSite】
定年を迎えた恒星が放出した外層ガスが輝いて見える「惑星状星雲」。その代表格ともいえること座のリング星雲の観測から、詳しい3次元構造が明らかになった。
こと座の方向約2000光年の距離にある「リング星雲」(M57:「環状星雲」とも)は、太陽の数倍の質量を持った恒星が核融合を終えて定年を迎え、放出した外層のガスが輝く惑星状星雲だ。ドーナツのような形がおなじみだが、中央部は全くの空洞ではなく物質で満たされている。
「穴の開いたベーグルというより、むしろジャムパンのようなものです」。そうコメントするC. Robert O'Dellさん(米ヴァンダービルト大学)らの研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡と地上の望遠鏡を使ってこの中央部の複雑な構造をとらえ、詳しい3次元モデルを得ることに成功した。
観測からは、リングの中に青いフットボール型の構造が収まっていて、地球から見て奥と手前側にふくらんでいることがうかがえる。この青色は、星雲の中心に残った白色矮星(恒星の燃えかす)からの紫外線を受けたヘリウムの輝きで、蛍光灯と同じしくみで光っている。
リングの内縁には、黒っぽいこよりのようなものが放射状に散見される。これは高温のガスが先に放出された低温のガスにぶつかってできるものだ。
これらのガスはおよそ4000年前に放出され、高速で広がるガスが遅いガスにぶつかって外側のリングが作られた。星雲全体は時速7万km以上、中央部のガスはさらに速いスピードで広がっている。星雲は今後1万年広がりつづけ、やがて宇宙空間に消えていくだろう。
リング星雲の元の星と比べて軽い太陽は、それほど華々しい最期とはならないようだ。「太陽が白色矮星になる時は、リング星雲の中心星の場合よりもゆっくりと温度が上がっていきます。じゅうぶんな温度に達したときには、すでに放出されたガスは遠くに広がっています。だからリング星雲ほど明るくはならないでしょう」(O'Dellさん)。