時速220万kmで銀河の外れを駆け抜ける星
【2014年5月12日 ユタ大学】
天の川銀河の外れを時速220万kmという超高速で駆け抜ける星が見つかった。銀河中心の超巨大質量ブラックホールがはじき飛ばしたものとみられる。
米・ユタ大学のZheng Zhengさんらの研究チームが、中国・興隆県のLAMOST望遠鏡で天の川銀河内の恒星分布を調査していたところ、太陽系との相対速度が天の川銀河内の通常の恒星の3倍近い、時速220万kmで移動する星を発見した。この天体「LAMOST-HVS1」は地球から見るとかに座方向約4万2400光年彼方にあるが、天の川銀河の中心からは6万2000光年の距離にあり、直径約10万光年の銀河円盤からは外れた場所に位置している。生まれて3200万年ほどの若い星で、太陽の9倍の質量がある。明るさは13等級だ。
こうした“超高速星”は、同等の明るさのものがここ10年ほどで20個前後見つかっており、LAMOST-HVS1はその中でもっとも太陽系から近い。LAMOST-HVS1を含む一群の超高速星の分布から、これらの天体は銀河の中心部からやってきたとZhengさんらは考えている。もともとは連星だったものが、銀河中心の超巨大質量ブラックホールに近づいて1個がその重力につかまり、もう1つが銀河の外れにはじき飛ばされたというのだ。研究チームでは、星がはじき飛ばされるこうした現象が起こるのは10万年に1回程度とみている。
銀河の果てに飛ばされたこれらの天体は、銀河を球状に取り巻き100万光年の規模まで広がるダークマター(正体不明の重力源)についてのヒントも与えてくれる。恒星の軌道や速度を調べることで、それらの動きに影響を及ぼすダークマターの重力作用がわかる。