天の川銀河中心の巨大ガス雲の動きから探るブラックホール周辺

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天の川銀河の中心に位置する超大質量ブラックホール「いて座A*」に接近した巨大ガス雲「G2」の運動に関する分析から、いて座A*周囲の様子が明らかにされた。

【2016年1月6日 ハーバード・スミソニアン天体物理学センター

地球から約2万5000光年の距離にある天の川銀河の中心には、太陽の約400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*(エー・スター)」が存在している。いて座A*にはわずかに明滅が見られるが、その理由はブラックホールを取り巻く円盤に時おり小さな塊が降着するためだと考えられている。

いて座A*周辺の擬似カラー画像
赤外線で観測した、いて座A*周辺の擬似カラー画像。マーカー位置のいて座A*に物質が降着し、わずかに光っている(提供:Stefan Gillessen and the Max-Planck Institute fur Extraterrestrische Physik)

数年前、巨大なガス雲「G2」がいて座A*に向かって移動している様子が発見された。G2はブラックホールによって破壊されると予測され、その現象を電波やX線で観測すればブラックホールのメカニズムを解明する手がかりが得られるだろうと考えられていた。しかし、そのような現象は起こらなかった。おそらくG2が高密度すぎて壊されなかったのだろう。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのMichael McCourtさんらは、破壊現象が起こらなかったことを逆に利用した研究を行った。ブラックホールの近くを動いたG2の軌道の変化を利用して、いて座A*を取り巻く最も内側のガスを調べたのだ。McCourtさんたちはG2よりも小さなガス雲「G1」の軌道データも使って、ガス雲の運動を決める複数のパラメータをはっきりさせた。

さらに、G1とG2の軌道変化が周囲の物質との作用によるものと仮定してブラックホール近傍の様子をモデル化し、ブラックホールへの降着流の回転軸を初めて決定した。また、降着流の源はブラックホール周辺の星からの恒星風ではなく、ブラックホールから約4光年の距離にある分子ガスの巨大なトーラス(ドーナツ状構造)らしいことも明らかにした。

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