ペルセウス座分子雲中の若い星、2種類の連星系や大きい塵円盤
【2016年1月8日 NRAO】
米・カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)を用いた、100個あまりの生まれたばかりの星の観測から、単独の星や連星系、星の周りの惑星の誕生について研究が行われた。観測対象となったのは約750光年彼方のペルセウス座分子雲内の原始星で、この分子雲内には太陽1万個分もの星の材料が含まれている。
オランダ・ライデン天文台のJohn Tobinさんらの研究チームは連星系に注目し、異なる形成メカニズムが働いて2種類の系が誕生すると結論づけた。それぞれの系では星同士の間の距離が大きく異なり、一方は太陽から地球までの約75倍と近く、もう一方は太陽から地球までの3000倍ほども離れている。
恒星はガスや塵でできた巨大な雲の中で物質が集まって形成される。研究チームの考えでは、星同士が遠く離れている系では分子雲が分裂してそれぞれで星が作られ、星が接近している系では、最初に誕生した原始星を取り巻く塵の円盤内で別の恒星が誕生するという。
また、米・イリノイ大学のDominique Segura-Coxさんたちの研究チームでは、いくつかの原始星を取り巻く塵の円盤が理論モデルの予測よりも大きいことを発見した。「半径が太陽・地球間の15倍から30倍の円盤を複数発見しました。理論モデルの予測より相当大きいですが、これは下限であって、実際にはもっと大きいのかもしれません」(Segura-Coxさん)。
物質が星に向かって落ち込むと星の近くに磁場が集中するが、理論モデルでは「磁気ブレーキ」と呼ばれる効果で星周円盤の回転が極端に遅くなり、円盤の半径が太陽から地球までの10倍程度に制限されると予測している。大きな円盤を持つ原始星では、磁場と星の回転軸が一致していないために磁場ブレーキ効果が弱くなるのかもしれない。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- アメリカ国立電波天文台: https://science.nrao.edu/
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