2年ぶりの増光を見せた変光星おおいぬ座Z

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原始星のおおいぬ座Zが2年ぶりに増光を起こしている様子が観測された。小望遠鏡でも観測可能な天体に注目が集まっている。

【2022年11月2日 高橋進さん】

変光星おおいぬ座Z(Z CMa)は、おおいぬ座のシリウスの北東、大犬の頭の位置にある天体です。10月25日に国立天文台の前原裕之さんから日本変光星観測者連盟(VSOLJ)のメーリングリストに、「Z CMaが8等台にまで明るくなっているようです。vsolj-obsのデータでは堀江さんが増光をとらえておられます」との書き込みがありました。堀江恒男さんと言えば脈動星から激変星まで幅広く積極的に観測されているベテラン観測者です。しかもおおいぬ座Zというと今年の初めにアルマ望遠鏡などの観測から恒星をとりまく円盤から尾が出ていることがわかり話題になった天体です。

おおいぬ座Zの光度
おおいぬ座Zの光度(VSOLJメーリングリストのデータから高橋さん作成)

おおいぬ座Zの正体は、水素ガスが大量に集まって凝縮し核融合反応を始める直前の星(原始星)で、その周囲をガスや塵でできた大きな円盤が取り巻いています。中心の星は連星系で、太陽質量の12倍の恒星と太陽質量の3倍の恒星とが回りあっています。その直径は非常に大きく、大きいほうの星の直径は太陽の1700倍(23億km、土星軌道の8割程度)、小さいほうも太陽の13倍(1800万km)もあります。この周囲を降着円盤が取り巻いており、この降着円盤を通して原始星に質量が溜まっていっていると思われます。

おおいぬ座Z系のイラスト
おおいぬ座Z系のイラスト(作成:高橋さん)

こうした天体では降着円盤の中で急激に物質が流れ込んでいって重力エネルギーが解放されることで明るく輝いたり、恒星自身が明るく輝いたりといった現象が起こります。ただ、現在のところ今回の増光がどのような原因によるものかはわかっていません。この星で何が起こっているのかを明らかにするためにも、今後の観測が必要とされています。

これからおおいぬ座Zは見やすいシーズンを迎えます。この機会にぜひ、多くの皆さんの観測をお願いします。

おおいぬ座Z周辺の星図
おおいぬ座Z周辺の星図。数字は恒星の等級(72=7.2等)を表す。画像クリックで表示拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

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