マンガンやニッケルに富むIa型超新星、決め手は質量と金属量
【2018年9月28日 Kavli IPMU】
Ia型超新星は、高密度の星である白色矮星とある種の伴星との連星系において、白色矮星が熱核反応の暴走を起こすことによって生じる爆発現象である。Ia型超新星爆発によって鉄やニッケル、マンガン、ケイ素や硫黄などが合成され、こうした元素が爆発で周囲にばらまかれて、次世代の恒星や惑星、生命の材料となる。
最近の多数の観測結果から、Ia型超新星とその超新星残骸に含まれている元素の組成に多様性があることがわかってきており、とくにマンガンやニッケルなどが鉄の量に比べて多いという特徴が見られている。たとえば、わし座の方向に位置する超新星残骸「3C 397」では、鉄に対するマンガンの存在比が太陽の値の2倍、鉄に対するニッケルでは太陽の4倍にもなることが観測されている。これは、標準的な理論モデルでは説明できない特異な化学組成だ。
東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)のShing-Chi Leungさんと野本憲一さんはIa型超新星の多次元流体シミュレーションを行い、白色矮星の特性や白色矮星となる前の星の特性の違いにより、爆発によって合成された元素の組成にどのような違いが生じるかを調べた。
シミュレーションの結果、マンガンと鉄、ニッケルと鉄の存在比は、白色矮星の質量や金属量の影響を受けていることが明らかになった。3C 397の存在比の値は、超新星の元となる白色矮星がチャンドラセカール質量(理論上の白色矮星の上限質量、太陽の1.4倍程度)と同じくらい重く、太陽より高い金属量を持っていれば説明が可能であることが示された。
これは、3C 397が、比較的軽い白色矮星の爆発で作られた超新星残骸ではないことを示している。また、天の川銀河の円盤部分に存在する星の多くは太陽の金属量に近いか下回る程度の金属量を持つのが一般的だが、3C 397の爆発前の白色矮星は太陽よりも高い金属量を持っていたと考えられる。
今回の研究成果は、Ia型超新星を起こす白色矮星の質量がチャンドラセカール質量に近いか、それよりかなり小さいかという論争に重要な手がかりを与えるものだ。また、太陽を超えるような高い金属量を持つ星の進化や銀河の化学進化の研究の重要性を示した成果でもある。Leungさんたちは今後、より多くの観測データを用いたり、モデルを他のIa型超新星に拡張させたりして、シミュレーションでのテストをさらに進めていくという。
〈参照〉
- 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU):シミュレーションが解き明かす、白色矮星の超新星爆発がマンガンとニッケルに富む謎
- The Astrophysical Journal:Explosive Nucleosynthesis in Near-Chandrasekhar Mass White Dwarf Models for Type Ia supernovae: Dependence on Model Parameters 論文
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