光度変化が特異なIa型超新星は、特異な進化過程を経て爆発した

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特異な光度変化を示した超新星について観測と理論計算を組み合わせた研究から、この天体が通常とは異なる進化過程を持つIa型超新星であることが示された。

【2021年12月16日 Kavli IPMU

太陽程度の質量を持つ星は進化を経て、最終的に中心のコアだけが残った白色矮星となる。こうしてできた白色矮星が別の恒星と近距離で回りあっていると、もう一方の恒星からガスを取り込んで質量を増やす。そしてその質量が太陽の約1.4倍(チャンドラセカール限界)に近づくと、核反応が暴走して大爆発すると考えられている。この爆発は「Ia型超新星」として観測される。

Ia型超新星は太陽の約50億倍ほどと非常に明るいので、遠方でも観測できる。そのうえ、真の明るさがのばらつきが小さいので、見かけの明るさと比較することで距離を測る指標として用いることができ、天文学で重要視されている。にもかかわらず、Ia型超新星がどのような機構で引き起こされるか、爆発の引き金となる発火はどのようにして起こるのかといった基本的な部分について、いまだ謎が多く残されている。

東京大学Kavli IPMUの姜継安さんたちの研究チームは、東京大学木曽観測所の口径1.05m木曽シュミット望遠鏡に搭載された超広視野高速カメラ「トモエゴゼン(Tomo-e Gozen)」がとらえた、Tomo-e202004aaelbというIa型超新星に着目した。この超新星は2020年4月にしし座の方向約9500万光年彼方の銀河NGC 3643に出現したもので、海外のグループにより発見されSN 2020hvfという符号が付けられている。

SN 2020hvfは爆発後約5時間しか経過していない段階で発見されたと考えられているが、爆発直後にパルス状の閃光を示した後に一旦暗くなり、また明るくなるという、短時間での大きな光度変化を示していた。Ia型超新星が爆発した直後に初期閃光を示す例は知られていたものの、今回のように1日以内で大きな光度変化を示したIa型超新星はこれまで知られていなかったものだ。

SN2020hvfの観測画像と光度変化
Tomo-e GozenによるTomo-e202004aaelb(SN 2020hvf)の最初期の観測画像(上)と、同じ時刻における光度変化の様子(下)。光度曲線上の緑の点は上図の超新星観測時と対応する光度の段階を示す(提供:Kavli IPMU/東京大学)

姜さんたちは京都大学岡山天文台「せいめい望遠鏡」や広島大学東広島天文台「かなた望遠鏡」などで追加観測を行い、この超新星が通常のものより明るい特異なIa型超新星であることを突き止めた。

さらに、閃光が生じうる状況や過程をシミュレーションして実際の観測データと比較したところ、爆発した白色矮星の周囲に大量の物質が存在し、この物質と超新星爆発の爆風とが衝突したことでエネルギーが放出され、閃光を引き起こしたことが示された。

これは、超新星爆発に至る進化過程において、爆発前の連星系が大量の物質を周囲にまき散らしていたことを物語る結果である。SN 2020hvfが通常のIa型超新星とは明らかに異なる進化過程を経たことを示しており、特異なIa型超新星の爆発機構として提案されている様々な理論予想を調べる手がかりになると期待される。

SN 2020hvfの想像図
超新星を取り囲む星周物質と超新星放出物質が衝突した様子の想像図(提供:東京大学木曽観測所)