太陽風によって温められる木星大気
太陽から吹き出されたプラズマである太陽風が地球大気中のガスと相互作用してオーロラが発生すると、そのオーロラによって地球の大気が加熱される。これは地球だけでなく、木星の極域で発生するオーロラでも同様の現象が起こる。
NASAジェット推進研究所のJames Sinclairさんたちの研究チームは、すばる望遠鏡の中間赤外線カメラ「COMICS」を使って木星を観測し、そのオーロラが木星の成層圏の加熱にまで影響を与えていることを明らかにした。従来考えられていたよりも深いところまで影響が及ぶことを示している。
「太陽風がもたらす『宇宙天気』現象の最も顕著な例が、木星に与える影響です。太陽から吹き付けられるプラズマが、これまで考えられていたよりも木星大気の深い所まで影響を及ぼしている様子が、今回まさに観測されたのです」(Sinclairさん)。
この観測は、NASAの木星探査機『ジュノー』を地球から支援する国際協調観測キャンペーンの一環として行われたもので、2017年1月から5月にかけて実施された。太陽風が木星にぶつかってからわずか1日以内で、大気中の化学的性質に変化が生じて大気の温度が上昇した様子がとらえられている。
「太陽活動によって宇宙空間から降り注ぐ高エネルギー粒子が木星大気の加熱や化学反応を引き起こすことを、明確に示しています。このような現象は、若かりしころの地球や他の恒星を巡る系外惑星といった、強い恒星活動にさらされる過酷な環境を持つ惑星の大気中で起こりうる複雑な有機化学反応について、手がかりを与えてくれるものでもあります」(東北大学 笠羽康正さん)。
関連商品
〈参照〉
- すばる望遠鏡:太陽風によって温められる木星大気
- NASA JPL:Jupiter's Atmosphere Heats up under Solar Wind
- Nature Astronomy:A brightening of Jupiter’s auroral 7.8-μm CH4 emission during a solar-wind compression 論文
〈関連リンク〉
- すばる望遠鏡
- アストロアーツ:
- 【特集】木星とガリレオ衛星(2019年)
- 天体写真ギャラリー:2019年 木星
関連記事
- 2024/11/06 今年5月に日本で見られた低緯度オーロラは高高度、色の謎も解明
- 2024/10/25 10cmの望遠鏡でイオの火山活動の変化を観測
- 2024/10/15 木星の衛星を探査、「エウロパ・クリッパー」打ち上げ成功
- 2024/10/04 今年5月に日本で見られたオーロラを発生させた太陽嵐を電波観測
- 2024/09/10 【特集】木星(2024~2025年)
- 2024/08/27 探査機「ジュース」、世界初の月・地球ダブルスイングバイを実施
- 2024/08/07 2024年8月中旬 火星と木星が大接近
- 2024/07/03 2024年7月上旬 木星とアルデバランが接近
- 2024/06/28 2つの特殊なオーロラの発生要因が明らかに
- 2024/05/13 日本など各地で低緯度オーロラを観測
- 2024/04/12 2024年4月下旬 木星と天王星が大接近
- 2024/03/29 衝突シミュレーションで探る氷衛星エウロパの構造
- 2024/02/07 2024年2月15日 月と木星が接近
- 2024/01/11 2024年1月18日 月と木星が接近
- 2023/11/21 2023年12月22日 月と木星が接近
- 2023/11/16 2023年11月25日 月と木星が大接近
- 2023/11/06 宇宙嵐を発達させるプラズマは太陽風ではなかった
- 2023/10/26 2023年11月3日 木星がおひつじ座で衝
- 2023/10/20 2023年10月29日 月と木星が接近
- 2023/09/14 10例目、木星表面の閃光現象がとらえられる