ベテルギウスの減光は大量の物質放出が原因

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昨秋から今年はじめにベテルギウスが暗くなった原因として、星から放出された物質が冷えて暗い塵となり光を遮っていたという説がハッブル宇宙望遠鏡の観測データから示された。

【2020年8月21日 ハーバード・スミソニアン天体物理センター

オリオン座の1等星ベテルギウスは、昨年10月ごろから急激に暗くなり始め、今年1月ごろにはついに1.5等級よりも暗くなってしまった(参照:「2等星に陥落!ベテルギウス減光のゆくえ」)。赤色超巨星のベテルギウスは天文学的なタイムスケールで近い将来に超新星爆発を起こすとみられていて、今回の減光はその前兆ではないかという説もあるが、関連はよくわかっていない。

この減光の理由については、巨大な黒点が表面を覆ったというものなど様々な説が挙げられた。米・ハーバード・スミソニアン天体物理センターのAndrea Dupreeさんの研究チームはハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測をもとに、星の一部が塵の雲に覆われたことが原因だとする説を発表した。

HSTがベテルギウスを紫外線で観測したデータによると、ベテルギウスの大気の外層中を、昨年9月から11月にかけて高温高密度の物質が時速約30万kmで移動していたことが明らかになった。この物質は星の表面からアウトバースト(突発現象)によって放出されたものと考えられている。物質は星の表面から遠く離れると冷えて、塵の雲を形成した。この塵の雲が、ベテルギウスの光球面の4分の1に当たる領域からの光を遮ったため、ベテルギウスが暗くなったということだ。

減光のメカニズム
ベテルギウスの減光のメカニズムの説明図。(左から1枚目と2枚目)ベテルギウスの表面から高温のプラズマの塊が噴出する。(3枚目)放出された物質が広がり、冷えて巨大な塵の雲が形成される。(4枚目)地球から見ると塵によってベテルギウスの一部が隠される(提供:NASA, ESA, and E. Wheatley (STScI))

ベテルギウスでは普段は、太陽が質量を失うスピードの3000万倍ほどの勢いで質量が減っている。Dupreeさんの計算によると、今回のアウトバーストで通常の2倍ほどの物質が失われたとみられている。このアウトバーストが何によって引き起こされたのかは、まだわかっていない。

現在ベテルギウスは昼間の空にあるため、地上の望遠鏡やHSTでは観測できないが、NASAの太陽観測衛星「STEREO」の位置からは見ることができる。そのSTEREOが最近行った観測により、この5月中旬から7月中旬にベテルギウスが再び暗くなっていることが示されている。ベテルギウスは約420日周期で明るさが変わる変光星だが、今回の減光のタイミングは予想外に早いものだ。引き続きベテルギウスの動向からは目が離せそうにない。

ベテルギウスの光度変化
2018年から2020年のベテルギウスの光度変化。赤い星印がSTEREOの観測データ(提供:Dupree, et al.)