1~4月の変光星を振り返る

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この冬から春にかけては様々な変光星が興味深い光度変化を見せてくれた。アストロアーツの記事で紹介した星の様子は実際にはどのようなものだったのか、振り返ってみよう。

【2022年4月28日 高橋進さん】

●ベテルギウスの変光

2020年2月に1.6等にまで減光し、「2等星になった」と話題になった半規則型変光星のオリオン座α星ベテルギウスですが、2021年からはおよそ200日の周期で0.4等から0.7等ほどを変光しています。大減光以前の2010~2019年のころはおよそ350~400日くらいの周期だったのですが、それに比べると周期が短くなっています。今後どのように推移していくのか非常に興味深いところです。

ベテルギウスの光度
ベテルギウスの光度(2021年8月~2022年4月)(VSOLJ(日本変光星観測者連盟)に報告されたデータから高橋さん作成、以下同)


●うさぎ座R星の変光(紹介記事

クリムゾンスター(クリムズンスター)とも呼ばれるミラ型変光星のうさぎ座R星は、2月下旬の極大が予報されていましたが、心もち早めの2月中旬に極大になったようです。この星は極端に赤いため、明るさの目測誤差がどうしても大きくなるのですが、極大等級はおおよそ7.5等くらいになったようです。

うさぎ座Rの光度
うさぎ座Rの光度(2021年9月~2022年4月)

うさぎ座R星は427日の変光周期とともに、およそ40年ほどの二重周期をもっています。そのため、40年周期の明るい時期は6等から10等くらいを変光し、暗い時期は10等から12等というとても暗い光度を推移します。この10年間くらいはわりと明るい時期を推移していたのですが、だんだんと暗い時期に代わっていこうとしているのかとも思われます。

また、今回は昨年7月ごろに9.5等くらいの極小を推移し、そこから明るくなっていったのですが、10月ごろ小さな極大のような「こぶ」が光度曲線に見られました。ミラ型変光星の中にはケフェウス座T星やはくちょう座χ星など、増光途中にこのような光度変化が見られるものがありますが、うさぎ座R星では珍しく感じました。今後も引き続き注意して見ていきたい現象です。


●いっかくじゅう座U星の変光(紹介記事

主極小と副極小が交互に来る、おうし座RV型変光星のいっかくじゅう座U星ですが、予報通りに2月中旬におよそ7等の主極小が見られました。また、4月初めに副極小も見られました。

いっかくじゅう座Uの光度
いっかくじゅう座Uの光度(2021年9月~2022年4月)

今後は6月に次の主極小が来ると思われます。西の空に低くなるため追いかけるのが難しくなりますが、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

いっかくじゅう座U星はおよそ7年くらいの周期で光度曲線全体が暗くなる、二重周期の変光星でもあります。星の周囲をダストの円盤が取り巻いていて、それに隠されることで起こる現象と考えられていて、次回は2024年に見られると予想されます。引き続きの観測が望まれます。


●はくちょう座χ星の変光(紹介記事

ミラ型変光星のはくちょう座χ星は、およそ予報通りの4月下旬に、およそ4.8等の極大を迎えたもようです。この星の極大光度は、明るい時は3等、暗い時は6等のこともありますが、今回はわりと平均的な4等台後半になりました。

はくちょう座χの光度
はくちょう座χの光度(2021年7月~2022年4月)

この星の光度曲線では、増光期の途中にこぶができることがあります。今回は、2月ごろのデータがないため明白ではないものの、海外のデータなども見ていくと、わりと直線的に明るくなっていったようにも思われます。

ミラ型変光星では、明るくなっていくときは急速な、暗くなっていくときはゆっくりとした光度変化が多いのですが、はくちょう座χ星はどちらも同じくらいのペースです。今年11月ごろの極小に向けてこれからどんどんと暗くなっていくと思われるので、ぜひ引き続き観測をお願いします。


●ペルセウス座GK星の変光(紹介記事

そろそろ増光かと観測者が首を長くして待っているUG型変光星(矮新星)のペルセウス座GK星。前回の増光から3年6か月が経過しましたが、まだ増光は起こっていません。2000年以降で8回の増光が見られており、平均すると2.5年に一度くらいの頻度で増光してきたのですが、今回は異例の長さとも言えます。

ペルセウス座GKの光度
ペルセウス座GKの光度(2018年1月~2022年4月)

昨年の11月に少し明るくなり「いよいよ増光」と思われたのですが、12.4等くらいでまた減光してしまいました。また、今年の3月にも12.5等くらいまで明るくなり「やっと増光」と思ったのですが、これもまたすぐに減光してしまいました。

もしかすると今回はこうした微妙な増光で「ガス抜き」をしつつ推移しているのかもしれません。いずれにしても、引き続き監視を続けないといけない状況が続いています。


●さそり座δ星の変光(紹介記事

さそり座δ星ジュバについては、伴星の近星点通過が今年の4月から5月に起こることから増光するかもしれないと先月お知らせしました。ジュバはカシオペヤ座ガンマ型変光星に分類される天体で、恒星から噴出した高温のガスが恒星の周りに円盤を形作り、その円盤の輝きによって増光するというメカニズムで変光します。

ジュバはもともとは2.3等くらいの星だったのですが、2000年7月に増光が観測されました。この時がちょうど伴星が主星のすくそばに接近した年でした。さらにその後も2011年の伴星の近星点通過の時にも増光が観測されました。そして今年の4月ごろに次の近星点通過があることから、増光するかもしれないと思われているのです。

4月26日現在では増光は観測されていません。熱心な観測者たちによって観測が続けられていますが、最近は1.9等前後をずっと推移しています。はたしてこのまま5月も変化なく終わるのか、それとも増光が見られるか、たいへん興味深いところです。夜半過ぎ以降の観測になりますが、ぜひとも多くの皆さんによる観測を引き続きお願いします。

ジュバの光度
ジュバの光度(2004年~2022年)

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