長周期変光星うさぎ座R、約30年ぶりの暗い極小
【2025年2月19日 高橋進さん】
うさぎ座R(R Lep)は変光周期がおよそ437日のミラ型変光星です。恒星大気中に酸素より炭素を多く含む「炭素星」と呼ばれる星で、天体望遠鏡で観察すると「クリムゾンスター」の愛称のとおり赤っぽい色で光る美しい様子が楽しめます。変光星総合カタログでは変光範囲は5.5~11.7等となっていますが、普段は7等から10等を推移します。
今シーズンのうさぎ座Rは2024年9月におよそ9等で観測が始まり、その後はゆっくりと減光していきました。最も暗くなったのは2025年1月5日ごろのおよそ11.2等で、現在はゆっくりと増光しつつあるところです。この11.2等という等級は普段の極小よりおよそ1等級暗いのですが、実はうさぎ座Rはおよそ40年ごとに光度曲線全体がおよそ1等級ほど暗くなることが知られていて、その40年周期の極小期の等級にあたります。
今回の40年周期の減光は2022年くらいから始まり、2022年9月の極小はおよそ10等、2023年11月の極小はおよそ10等台半ば、そして今回の2025年1月は11.2等と、だんだんと暗い極小になってきました。
(上)うさぎ座Rの1970~2025年の光度、(下)2021~2025年の光度(VSOLJデータベースから高橋さん作成)
ただ、今回の極小は40年周期の極小にしては早いのではないかとの声も聞かれます。アメリカ変光星協会(AAVSO)および日本変光星観測者連盟(VSOLJ)の過去のデータによると、およそ40年周期の変動としては1921年12月、1958年2月、1996年4月ごろに極小になっていて、それらの間隔は36.2年と38.2年です。ところが今回の極小は前回の1996年からまだ29年しか経っていません。その意味ではこのような暗い状態がまだ数年、ひょっとすると10年くらいも続くのかもしれません。
うさぎ座Rが今後どのような光度変化をしていくのかまだまだ目が離せません。今シーズンは4月ごろまで宵空で増光していく様子を見ることができます。ぜひ多くの皆さんによる引き続きの観測をお願いします。
うさぎ座R周辺の星図(「ステラナビゲータ」で星図作成)
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