2024年の主要なミラ型変光星の光度変化予測

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数か月以上の長い周期で明るさが大きく変わるミラ型変光星のうち主なものについて、2024年の光度変化の予測グラフを紹介しよう。春先のしし座R、夏のはくちょう座χなどが見やすそうだ。

【2024年1月10日 高橋進さん】

「ミラ型変光星」はおおよそ100日以上の周期で2.5等級程度以上の明るさ変動があり、比較的規則的な変光を見せる脈動変光星です。光度変化が大きく変光周期もほどよく長いことなどから、初心者でも観測が容易な天体です。

こうしたミラ型変光星の中でも明るく観測しやすい9星について、いつどれくらいの明るさかの予想グラフを作成しました。ぜひ参考にして観測にご利用ください。

※ミラ型変光星の極大予報は様々な天文誌や観測団体で公表されています。データの選択や計算手法により日付や等級に関して多少のずれはありますが、自分の気に入った予報をお使いください。筆者は基本的に日本変光星観測者連盟のデータを使い、データが少ない場合などはアメリカ変光星協会のデータも参考にして、過去10年間ほどの周期をもとにして計算しています。

ミラ型変光星の2024年の変光予想
ミラ型変光星の2024年の変光予想。画像クリックで表示拡大(提供:高橋さん)

まず、春の代表的なミラ型変光星のしし座R(R Leo)が3月23日ごろに極大を迎えます。1月くらいから急速に明るくなり、極大等級は5等くらいと思われます。観測に最適な時期での極大です。ぜひ多くの皆さんにお楽しみいただきたいと思います。

しし座R周辺の星図
しし座R周辺の星図(「ステラナビゲータ」で星図作成、以下同)

オリオンのこん棒の先にあるオリオン座U(U Ori)の極大は5月14日ごろと予想されています。極大期には夕方の西の低空にあり、観測は難しいかもしれませんが、2月から4月にかけてゆっくりと明るさを増していく様子をお楽しみください。

オリオン座U周辺の星図
オリオン座U周辺の星図

炭素星で「クリムゾンスター」とも呼ばれ、真っ赤な色で人気のあるうさぎ座R(R Lep)は、今年は6月8日ごろに極大になると予想されます.うさぎ座は冬の星座なので、残念ながら極大期の観測はできそうにありません。ただ、ゆっくりと明るさを増していく2月から4月ごろには観測できますので、ぜひご覧ください。

うさぎ座R周辺の星図
うさぎ座R周辺の星図

ミラ型変光星の代表星、くじら座のミラ(ο Cet)の極大は4月17日と予想されており、太陽と同じ方向にあるため今年も観測は非常に難しいです。2月から4月初めにかけて急激に明るさを増していきますので、この時期の観測をお楽しみください。

ミラ周辺の星図
ミラ周辺の星図

はくちょう座χ(χ Cyg)は4~13等までダイナミックな変光を見せる星です。今年の極大は6月30日ごろで、深夜に高く上るという絶好のタイミングで観測できます。空のきれいなところでは肉眼でも見えるでしょう。ぜひお楽しみください。

はくちょう座χ周辺の星図
はくちょう座χ周辺の星図

わし座R(R Aql)は周期272日、変光範囲6等から10等でメリハリの効いた光度変化を見せてくれる星です。今年は6月25日が極大予想日で、はくちょう座χと同様に深夜に高く上り、観測しやすいと思われます。

わし座R周辺の星図
わし座R周辺の星図

おとめ座R(R Vir)の変光周期は146日で、ミラ型変光星の中でも短周期の天体です。今年は5月3日ごろの極大が観測しやすいタイミングでしょう。

おとめ座R周辺の星図
おとめ座R周辺の星図

ミラ型変光星の観測は、大きな望遠鏡がなくても双眼鏡や肉眼でも可能です。また、こうした観測は恒星の進化の研究に不可欠なものであり、周期光度関係から距離測定などにも使われる天体です。変光星を観測して、楽しい一年をお過ごしください。


星ナビ2024年1月号ではこのほか、約80年ぶりの増光が期待される再帰新星のかんむり座Tや、食変光星ペルセウス座βアルゴルなど、ミラ型変光星以外も解説いただいています。

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