等方的な惑星間塵を検出、宇宙赤外線背景放射の観測精度も向上
【2020年10月7日 関西学院大学】
太陽系には「惑星間塵」と呼ばれる、大きさが数mmより小さな微粒子が漂っている。惑星間塵は彗星や小惑星に由来すると考えられ、その分布は地球などの惑星の軌道と同じ黄道面に集中している。この微粒子は太陽光を散乱するため、地球から見れば黄道付近で薄く輝く「黄道光」として観測できる。
一方で、惑星間塵を供給する彗星の中には黄道から大きく離れた軌道を通るものもある。とくに長周期彗星は、太陽系外縁部で球殻状に分布する「オールトの雲」と呼ばれる小天体の集合に起源を持つとされており、そうした彗星が残した惑星間塵は、太陽を中心に等方的に分布すると予想できる。
黄道光は可視光線と赤外線の波長で特に明るく、等方的に分布する惑星間塵も、空のあらゆるところから届く赤外線に寄与しているはずだ。このような赤外線の中には天の川銀河の外に存在する天体から飛来する「宇宙赤外線背景放射」と呼ばれる成分があり、初期宇宙を調べる上で重要だ。その測定には、手前にある太陽系と天の川銀河の光を正確に除去する必要があるが、等方的な惑星間塵による黄道光の強度がこれまではわかっていなかったため、宇宙赤外線背景放射を正確に測定することができていなかった。
金沢大学の佐野圭さんたちの研究グループはモデル計算に基づいて、観測する方向が太陽からどれだけ離れているか(太陽離角)によって惑星間塵の散乱による光の強度が変化すると予想した。そこで、NASAの宇宙背景放射探査衛星「COBE」による、様々な太陽離角で宇宙を観測した赤外線データを解析した。
観測データの強度から太陽系内と天の川銀河の光を差し引いたところ、残った赤外線の強度は太陽離角に応じて変化することが明らかとなった。この中には等方的な惑星間塵からの赤外線と宇宙赤外線背景放射の両方が含まれているが、後者の強度は太陽離角によらず一定であることから、研究グループはこれを惑星間塵の光と分離することに初めて成功した。
等方的な惑星間塵の詳細な構造や起源は、将来の惑星探査機を利用した宇宙観測による解明が期待される。
また、今回の研究で発見された等方的な惑星間塵を新たに考慮して、宇宙赤外線背景放射の明るさを再評価したところ、宇宙赤外線背景放射の明るさが系外銀河の光の合計より数倍大きいことが検証された。佐野さんたちがこれまでに観測ロケットや人工衛星による観測結果から主張してきた内容を裏付ける成果だ。天の川銀河の外の遠い宇宙に銀河以外の未知の天体が存在することを示すものであり、その起源を解明することが重要となる。
〈参照〉
- 関西学院大学:宇宙に漂う塵の分布に関する新事実を発見~赤外線衛星データからの発掘~
- The Astrophysical Journal:The Isotropic Interplanetary Dust Cloud and Near-infrared Extragalactic Background Light Observed with COBE/DIRBE 論文
〈関連リンク〉
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