宇宙環境を知る手がかり、突発発光オーロラの形状変化を再現
【2021年7月13日 金沢大学】
地球周辺の宇宙空間を飛び交う電子は電子機器の誤動作や故障を引き起こすため、人工衛星にとっては大敵だ。その電子の発生と消失の両方に、宇宙で発生する電磁波の一種である「コーラス波動」が関わっていることが知られている。これまでの観測で、このコーラス波動が高エネルギー電子を地上へ降下させ、突発発光オーロラ(フラッシュオーロラ)を生じさせることがわかっている(参照:「地球近傍宇宙のコーラス波動と突発発光オーロラの同時観測に成功)。つまり、フラッシュオーロラを観測することで宇宙における電子の増減を知る手がかりが得られるはずだ。
しかし、フラッシュオーロラを発光させる高エネルギー電子とコーラス波動が宇宙で相互作用する領域(波動粒子相互作用領域)がどのように変化しているのか、地上から見るフラッシュオーロラがなぜ形状変化を示すのか、その詳細はわかっていなかった。波動粒子相互作用領域は広く、それに対して科学衛星では一点だけしか観測できないため、オーロラの空間変化の要因はわからなかったのである。
金沢大学の尾崎光紀さんたちの研究グループは、米・アラスカに設置されている高感度カメラで撮影されたフラッシュオーロラの発光分布の空間変化を詳細に解析した。その結果、北半球で観測されたフラッシュオーロラは北側(高緯度側)よりも南側(低緯度側)へ2.4倍も大きく拡大する傾向があることが明らかとなった。フラッシュオーロラの低緯度側への拡大は、コーラス波動とオーロラのもととなる高エネルギー電子が生じる宇宙の波動粒子相互作用領域の拡大を意味する。
この空間変化を再現するため、尾崎さんたちはコーラス波動の伝搬過程と電離層のオーロラ発光を組み合わせる計算モデルを新たに開発した。このモデルから、フラッシュオーロラが低緯度側に拡大するのは、宇宙のコーラス波動が発生域につながる磁力線から少しずつ逸脱し地球側に偏って伝搬するためであることが明らかになった。
さらに、コーラス波動がより発生域から離れて伝搬できるほど、地上から見えるフラッシュオーロラの空間サイズは拡大することも示された。オーロラ空間サイズからコーラス波動の伝搬の様子だけでなく、コーラス波動の振幅変化を知る手がかりとなるかもしれない。今回の研究結果から、電磁波とオーロラの総合観測によって、放射線電子の発生と消失の様子がより詳細にわかるようになる可能性が示された。
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〈参照〉
- 金沢大学:フラッシュオーロラの形状変化の原因を数値計算で解明
- Journal of Geophysical Research: Space Physics:Spatial Evolution of Wave-Particle Interaction Region Deduced From Flash-Type Auroras and Chorus-Ray Tracing 論文
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