原始惑星系円盤でジメチルエーテルを初検出

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これまでに原始惑星系円盤で確認された中では最大の分子であるジメチルエーテルが、若い星で初めて見つかった。

【2022年3月11日 ヨーロッパ南天天文台

これまで、星が生まれる前の星間物質では様々な種類の複雑な分子が見つかっている。それに対して、中心で恒星が誕生し、その周囲に惑星の材料となる原始惑星系円盤が残された段階になると、あまり大きな分子が検出された例はなかった。今回ジメチルエーテルが検出されたことで、生命の材料にもなるこうした分子は原始惑星系円盤の中で隠れていることが確かめられた。

ジメチルエーテルが見つかったのは、へびつかい座の方向444光年の距離にある若い星Oph-IRS 48(IRS 48)である。この星は原始惑星系円盤内に塵が三日月状に集まった「ダストトラップ」が存在することが知られており、これまで多くの観測・研究が行われてきた。ダストトラップは、円盤の内側で誕生した惑星の重力によって塵が掃き寄せられた領域であり、集まった物質の中から彗星や小惑星、さらには惑星の規模まで天体が成長する可能性がある。

IRS 48周囲の原始惑星系円のイラストとジメチルエーテル分子の放射
(中心)IRS 48周囲の原始惑星系円盤のイメージイラスト。(右上)ダストトラップの電波観測画像。ジメチルエーテル分子の存在を示す放射がとらえられている。(右下)分子模型のイラスト(提供:ESO/L. Calçada, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/A. Pohl, van der Marel et al., Brunken et al.)

IRS 48をチリのアルマ望遠鏡で観測したのはオランダ・ライデン天文台のNashanty Brunkenさんたちの研究チーム。見つかったジメチルエーテル(CH3OCH3)は9個の原子からなり、これまでに原始惑星系円盤で確認された中では最大の分子だ。この観測では、ギ酸メチルの可能性がある信号も検出されている。ギ酸メチルはジメチルエーテルと似た構造を持つ分子で、さらに大きな有機分子を構成するブロックになり得る。

ジメチルエーテルなどの多くの複雑な有機分子は、星の材料となる分子雲の中で、星が誕生する前から形成されると考えられている。分子雲は低温の環境であるため、原子や一酸化炭素のような単純な分子が塵の粒に氷となって付着する。そして氷の層の中で化学反応が起こり、より複雑な分子ができると考えられていた。

IRS 48のダストトラップでも、集積した塵の粒子が複雑な分子を含む氷で覆われていることが最近の観測でわかっていた。ジメチルエーテルが検出されたのもこのダストトラップのあたりなので、中心星に加熱された氷が昇華してガスになったときに閉じ込められた分子が解放されたのだろうとBrunkenさんたちは考えている。

ダストトラップ
IRS 48の原子惑星系円盤内のダストトラップ。(星印)IRS 48、(緑色)ダストトラップ内のミリメートルサイズの大きな粒子の分布、(オレンジ色)マイクロメートルサイズの小さな粒子の分布。左上の楕円は海王星の軌道の大きさを示したもの(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/Nienke van der Marel)

ジメチルエーテルの検出は、星形成領域に存在することが知られている他の多くの複雑な分子も、原子惑星系円盤内の氷に潜んでいる可能性を示唆するものだ。こうした分子は、生命の基本的な構成要素であるアミノ酸や糖類の材料となる。

「この発見がさらに面白いのは、これら大きく複雑な分子が、円盤の中で形成中の惑星に供給されることがわかったからです。これは従来知られていませんでした。ほとんどの星系では、こうした分子は氷の中に隠されているからです」(ライデン大学 Alice Boothさん)。

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