巨大惑星に収縮する前の塊、若い星の周囲で発見
【2023年7月28日 アルマ望遠鏡】
いっかくじゅう座の方向5000光年以上の距離にある若い星「いっかくじゅう座V960星」(V960 Mon)は、2014年に急激に通常の20倍も明るくなって注目を集めた。この増光は、成長途上にある中心星に周囲から物質が流れ込むことで発生したのだと考えられている。
中心星の増光は、その周囲を取り巻く構造も照らし出すので、その中で惑星が成長していく過程を調べる絶好のチャンスだ。チリ・サンティアゴ大学のPhilipp Weberさんたちの研究チームは、V960 Monがまだ明るかった2016年にヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTによる観測を実施している。中心星の光を遮る観測装置「SPHERE」による撮影で、太陽系よりも大きな範囲に複雑な渦巻構造が広がり、腕の部分に物質が集まっている様子がとらえられた。
この発見を受けて、同時期にアルマ望遠鏡がV960 Monを撮影していたときのデータが精査された。近赤外線をとらえるVLTは星周辺の塵が多く含まれる物質の表面を調べることができ、アルマ望遠鏡は電波の眼でその構造をより深く見ることが可能だ。分析の結果、渦巻の腕がいくつかの塊に分裂しようとしていることがわかった。それぞれの塊は惑星に相当するだけの質量がある。
「巨大惑星に成長していく可能性のある塊を、若い星の周辺で見つけた初の観測例です。とても研究者の目を引きます」(チリ・ディエゴ・ポルタレス大学 Alice Zurloさん)。
木星のような巨大ガス惑星のでき方には、「コア集積説」と「重力不安定説」という2つの考え方がある。コア集積説では、塵が降り積もることで惑星が成長する。一方、重力不安定説では、中心星を取り巻く物質の円盤が分裂し、分かれた塊が自分の重さでつぶれることで惑星が形成される。コア集積説を支持すると考えられる観測例はこれまでにいくつもあったが、重力不安定説を支持するものはほとんどなかった。
「私たちは10年以上の間、どのようにして惑星ができるのかという手がかりを探し続けていました。今回の驚くべき発見ほど興奮させられるものはありません」(サンティアゴ大学 Sebastián Pérezさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:新たな画像が明らかにする惑星誕生の秘密
- ESO:New image reveals secrets of planet birth
- The Astrophysical Journal Letters:Spirals and Clumps in V960 Mon: Signs of Planet Formation via Gravitational Instability around an FU Ori Star? 論文
〈関連リンク〉
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