無人宇宙船「オリオン」月から地球へ帰還
日本時間(以下同)の11月16日に打ち上げられたNASAの無人宇宙船「オリオン」は、月に接近する200万km以上の旅路を終えて大気圏へ再突入し、12月12日午前2時40分にメキシコ沖の太平洋に着水した。これにより、月面有人探査を目指す「アルテミス計画」最初の飛行テスト「アルテミスI」は完結した。
「オリオン宇宙船の着水は、アポロ17号が月に降り立った日からちょうど50年というタイミングで、アルテミスIの最後を飾りました。世界最強のロケットの打ち上げで始まり、月を周回する並外れた飛行の果てに地球へ戻ったこの飛行テストは、アルテミス世代の月探査における大きな一歩です」(NASA長官 Bill Nelsonさん)。
今回のオリオン宇宙船は、有人飛行の本番時と同様、宇宙飛行士が乗る「クルーモジュール」と動力供給などを担う「サービスモジュール(ヨーロッパ宇宙機関が開発を担当)」で構成されていた。両者は一体となって月をフライバイしたあと、地球帰還直前にサービスモジュールが切り離され、クルーモジュールはおよそ大気圏再突入時の約3000度という高温に耐えて着水した。
オリオンはアメリカ海軍の揚陸艦「ポートランド」に回収されている。今後は米・ケネディ宇宙センターへ運ばれ、宇宙飛行士を模したマネキンなどの搭載物が取り出される予定だ。今回の飛行や大気圏再突入による宇宙船の内外への影響が分析され、今後のミッションに活かされる。
アルテミスIのオリオンは2回の月フライバイで最接近時には月面から約130kmまで近づいた一方、地球からは最大で約43万kmも遠ざかった。これは、人が乗り込めるように設計された宇宙船としては、1970年にアポロ13号が到達した約40万kmを上回る最遠記録となる。宇宙に滞在した時間もアポロ計画の宇宙船よりはるかに長かった。
2024年5月に予定されている「アルテミスII」ではオリオンに宇宙飛行士を載せて月周回飛行を実施する。その後、「アルテミスIII」以降で人類が再び月面に降り立つ計画だ。
〈参照〉
- NASA:Splashdown! NASA’s Orion Returns to Earth After Historic Moon Mission
- NASA Blog - Artemis I:
- Orion Begins Checkouts, Completes First Service Module Course Correction Burn
- Artemis I - Flight Day 11: Orion Surpasses Apollo 13 Record Distance from Earth
- Artemis I - Flight Day 13: Orion Goes the (Max) Distance
- Artemis I - Flight Day 26: Orion splashes down, concluding historic Artemis I mission
- Artemis I Update: Orion Secured Inside USS Portland Ahead of Return to Shore
〈関連リンク〉
関連記事
- 2024/06/26 嫦娥6号、月の裏側のサンプルを携え地球に帰還
- 2023/08/21 ロシアの探査機ルナ25号、月面に衝突
- 2023/07/21 星座八十八夜 #7 夏の夜空の大きな釣り針「さそり座」
- 2023/04/26 「HAKUTO-R」、民間初の月面着陸ならず
- 2023/02/28 JAXA、「アルテミス世代」の宇宙飛行士候補2人を発表
- 2022/12/12 日本初の民間月着陸船、打ち上げ成功
- 2022/11/24 宇宙船「オリオン」月に到着、日本の探査機「エクレウス」は月フライバイ
- 2022/11/17 再び月を目指し、アルテミス計画最初の打ち上げ成功
- 2021/11/26 JAXAが宇宙飛行士を新規募集
- 2021/03/02 公式ブログ:実録!ベランダ撮影ふたたび ~オリオン大星雲~
- 2020/12/21 嫦娥5号、月のサンプルを携え帰還
- 2020/12/04 嫦娥5号、月面着陸とサンプル採取に成功
- 2020/11/24 中国の月探査機 「嫦娥5号」、打ち上げ成功
- 2020/03/26 リビングで月面着陸を追体験 映画「アポロ11 完全版」
- 2019/01/08 中国の「嫦娥4号」、史上初めて月の裏側に着陸
- 2018/01/24 民間月探査レース「Google Lunar XPRIZE」、月着陸達成チームなく終了
- 2018/01/12 日本の「SORATO」、3月打ち上げが困難に
- 2017/02/27 日本初の月面探査ローバー、名称は「SORATO」
- 2015/02/24 月面レースで日米チームが提携、2016年に打ち上げ
- 2015/01/28 民間月探査レースで日本の「チーム・ハクト」が中間賞