ispaceの月着陸船「レジリエンス」打ち上げ、再挑戦を本格始動

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日本のispace社による月面探査プログラム「HAKUTO-R」の月面探査車「テネシアス」を搭載した月着陸船「レジリエンス」が1月15日に打ち上げられた。レジリエンスは無事に予定の軌道へ投入され、ispaceの月面着陸への再挑戦が本格始動した。

【2025年1月16日 ispace (1)(2)

1月15日15時11分(日本時間、以下同)、日本の宇宙スタートアップ企業「ispace(アイスペース)」が開発した小型月面探査車「テネシアス(Tenacious)」を搭載した着陸船「レジリエンス(Resilience)」と、米・民間企業ファイアフライ・エアロスペース(Firefly Aerospace)社の月着陸船「ブルーゴースト(Blue Ghost)」を搭載したスペースXのファルコン9ロケットが、米・フロリダ州のケネディー宇宙センターから打ち上げられた。

月着陸船「レジリエンス」の打ち上げと分離
(上)月着陸船「レジリエンス」の打ち上げ、(下)レジリエンスの分離(提供:SpaceX

打ち上げ後、最初にブルーゴーストがロケットから分離され、打ち上げのおよそ1時間半後にレジリエンスも分離されて、所定の軌道へ投入された。さらに、通信が確立され、着陸船の姿勢が安定し電源が供給されていることも確認された。これにより、ispaceが設定しているミッションの10段階マイルストーンのうち、3つまでが成功した。この後、レジリエンスは最初のエンジン噴射を行って、月面着陸再挑戦への旅を実質的に開始することになる。

「HAKUTO-R」ミッション2「Venture Moon」のマイルストーン
「HAKUTO-R」ミッション2「Venture Moon」のマイルストーン。画像クリックで表示拡大(提供:ispace)

「本日ミッション2の打ち上げおよびロケットからのRESILIENCEランダーの分離を多くの関係者の皆さまと共に見届けることができ、感慨深い思いです。RESILIENCEは今日、深宇宙に向けて旅立ちました。これは、ispaceが(月を中心とした地球と月の間の)シスルナ経済圏を構築し、お客様のペイロードを月面に輸送するサービスを提供するための、新たな章の始まりを意味します」(ispace代表取締役CEO&Founder 袴田武史さん)。

レジリエンスはまず地球周回軌道を1か月ほど飛行した後、ispace初となる月フライバイを行って、地球から約100万km離れた低エネルギー遷移軌道へ入る。この軌道は月到達に必要な燃料が少なくて済み、より多くのペイロード搭載が可能となるものだ。

打ち上げから3~4か月後には月周回軌道に入り、エンジン噴射を数回行って数週間かけて軌道を制御し、最終的に高度約100kmの円軌道へ入る。

そして、打ち上げから4~5か月後に当たる今年5月末から6月初めごろに月面着陸に挑む。無事着陸すれば、民間企業としては世界で米国に次いで2番目、日本の民間企業としては初の成功となる。

レジリエンスの月到着までの軌道。
レジリエンスの月到着までの軌道。①地球周回、②低エネルギー遷移軌道、③月周回(提供:ispace)

今回のMission 2では、月面着陸だけでなく、月面で小型探査車テネシアスを走行させ、探査や月の砂(レゴリス)の採取も予定されている。これをふまえて、着陸地点としては「寒さの海」が選ばれている。この領域は平坦でクレーターなどの地形がなく、運用上の安全が見込まれる。科学探査があまり進んでいない点でも興味深いエリアだ。

寒さの海
寒さの海(氷の海と呼ばれることもある)(提供:NASA

2022年12月から2023年4月にispaceが実施したMission 1では、計画段階における着陸地点の変更に伴って発生したソフトウェアの不具合により、着陸船の推定高度に誤差が生じ、着陸船は月面まで高度約5kmにまで接近したものの、軟着陸には至らなかった。今回ispaceでは様々な運用のリハーサルや使用するソフトウェアの訓練を実際さながらに行って、着陸再挑戦となるMission 2にのぞんでいる。

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