「レジリエンス」、月面着陸成功ならずミッション終了

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6日未明、ispace社の「レジリエンス」が月面着陸に挑んだが、着陸成功を示すデータが受信されず、通信回復は見込めないとしてミッション終了となった。同機は月面へハードランディング(衝突)したとみられる。

【2025年6月6日 ispace

今年1月に打ち上げられ5月に月周回軌道に投入された「レジリエンス」は、6月6日午前3時13分に月面への着陸シーケンスを開始。高度約100kmから20kmまで惰性降下を行ったあと、予定通り主エンジンによる減速を開始した。

月周回軌道上でレジリエンスが撮影した月面
月周回軌道上でレジリエンスが撮影した月面。画像右下にレジリエンスの着陸脚と小型月面探査車「テネシアス(Tenacious)」を保護するカバーが写っている(提供:ispace

続いて、レジリエンスの姿勢がほぼ垂直になったことは確認されたが、機体の状況を示すテレメトリーデータが消失。予定時刻の4時17分を過ぎても着陸を示すデータが受信されず、通信も途絶えた。その後、レジリエンスの再起動が試みられたが地上との通信が回復することはなかった。この状況を受けて月面着陸の達成は困難と判断され、ミッションは終了となった。

同日午後までに明らかになっていることは2つあるという。まずひとつ目は、月面との距離を測るセンサーは予定通りに高度20km地点から稼働を開始したものの、高度約10km~3kmの範囲で行われるはずの測定が実際には推定高度1.5km~1kmの範囲で行われたために有効な測定値の取得が遅れたこと。ふたつ目は、レジリエンスの降下速度が想定より速かったことだ。

この状況から、想定より低い高度で距離の計測が始まったために、レジリエンスの減速能力の限界により十分に減速できず、そのまま月面にハードランディング(衝突)することになった可能性が高いと推測されている。

ただし、それ以外にも減速できなかった原因として、レジリエンスの姿勢が高度の測り方に影響が及んだ可能性のほか、推進系やソフトウェアやハードウェア上の問題だった可能性も考えられるとのことで、今後原因究明が進められる。

レジリエンスが撮影した月に昇る地球
レジリエンスが5月27日に撮影した、月に昇る地球(提供:ispace
ispaceでは、2023年4月に実施したミッション1と今回のミッション2が技術検証ミッションという位置づけで、2027年にNASAの「商業月貨物輸送サービス(CLPS)」プログラムの一環として実施予定のミッション3で、月への輸送サービスを開始し事業として利益を得ていく計画だった。ミッション3の着陸船「APEX1.0」は、レジリエンスに比べると大幅に大型化し、総重量約1tのレジリエンスに比べて5倍以上の5.4t、ペイロードも10倍以上の300kgが搭載可能となる予定で、2基の通信衛星を搭載して月の周回軌道へ投入し、月の裏側と地球との通信を確立することが計画されている。

6月6日午前に行われた記者説明会で、ispaceの最高技術責任者の氏家亮さんは、「ミッション3の商業化の判断は今回の原因究明後となるが、ミッション1と2で得られた知見を生かせることは間違いなく、大型化して商業化を実現するために立ち止まることなく取り組んでいきたい」と話した。

ispaceの代表取締役CEO&Founderの袴田武史さんは、「(2023年4月に続く)2回目の失敗を重く受け止めたい。まずは原因を究明し、その結果を生かして今後のミッション3につなげていくことが何より重要。今回涙が出そうになった場面もあったが、会社をリードする立場として、強い意志を持ち続け、起こったことを受け止めて前に進みたい。月面着陸は簡単なことではなく、だれでもできるものではないが、米企業やJAXAが成功していて不可能ではない。着陸態勢まではいっているので、その先の着陸をどう成功させるかを突き詰めて、できるだけ早く(成功を収めた米企業に)追いつき、将来的にグローバルにリードできる企業を目指したい」と話した。

APEX 1.0ランダーの想像図
ispace ミッション3で打ち上げ予定のAPEX1.0ランダーの想像図(提供:ispace

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