水星でもコーラス放射が「さえずる」
【2025年12月22日 金沢大学】
地球の磁気圏内では、電子が電磁波と共鳴することで「コーラス放射(コーラス波動)」と呼ばれる電磁波現象が発生していて、高エネルギーのプラズマが集まる放射線帯の形成と消失に関与することが知られている。コーラス放射という名称は、この放射を音波に変換すると鳥のさえずりのように聞こえることに由来する。
コーラス放射は木星や土星のような放射線帯を持つ巨大ガス惑星の磁気圏でも発生している。一方、地球に比べて磁場が約100分の1しかない水星については長らく未探査だったが、水星磁気圏探査機「みお」がこれまでに6回行った水星フライバイ時に、水星磁気圏の電磁波観測が初めて実施された。
金沢大学の尾崎光紀さんたちの研究チームはその探査データから水星のコーラス放射を複数検出し、理論やシミュレーションからコーラス放射の局所的発生を示した(参照:「探査機「みお」、オーロラの源を解く水星の局所的コーラス波動を発見」)。しかし、この局所的コーラス放射が地球のコーラス放射と共通する周波数変化を示すのかどうかは明らかではなかった。
尾崎さんたちは今回、「みお」が取得した水星の電磁波データと、地球磁気圏尾部観測衛星「ジオテイル(GEOTAIL)」が蓄積してきた典型的な地球コーラス放射の特徴とを照合した研究を行った。ジオテイルはオーロラの源となる地球磁気圏の尾部(地球半径の約10倍より遠い領域)を30年にわたり詳細に観測し、その成果の中にはコーラス放射の発生条件、空間分布、周波数特性などに関する貴重な知見も含まれている。

水星磁気圏探査機「みお」(右)と地球磁気圏尾部観測衛星「ジオテイル」(左)によるコーラス放射の協調観測イメージ図(提供:NASA / Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory / Carnegie Institution of Washington / ESA/ NASA)
研究の結果、水星の電磁波の周波数が短時間に上昇・下降していて、地球のコーラス放射と共通する周波数変化を示すことがわかった。また、高エネルギーの電子が流入しやすい朝側の領域に集中しているという空間分布も明らかになった。電子降下が主に朝側領域で、地球の磁気圏と同様のメカニズムを通じて発生していることが強く示唆される。

「みお」が観測したコーラス放射(灰色の長方形)とジオテイルが観測した地球のコーラス放射(色付きの点)の周波数変化率の類似性(提供:プレスリリース)
尾崎さんたちは、“水星のコーラス放射が地球のコーラス放射のように「さえずる」(周波数変化を示す)ものであれば、厚い大気を持たない水星の近傍に比較的低いエネルギー(低温度)の「冷たい電子」が伴うことが示唆される"という、「水星周辺の冷たい電子の存在」を提唱している。今回の成果はこの説を裏付ける重要な証拠ともなった。
2027年春から始まる「みお」の探査によって水星のコーラス放射の空間分布や周波数変動、冷たい電子の実在性や起源などが解明され、理解が飛躍的に進むことが期待される。
〈参照〉
- 金沢大学:惑星磁気圏におけるコーラス放射の共通性を実証! 水星磁気圏探査機「みお」と地球磁気圏尾部観測衛星GEOTAILによる惑星磁気圏比較の成果
- Nature Communications:Nonlinear spatiotemporal signatures of whistler-mode wave activity around Mercury during six flybys of BepiColombo mission 論文
〈関連リンク〉
- JAXA:
- ESA:BepiColombo
- X:
- GEOTAIL:
- アストロアーツ:
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