40億個の天体を含む史上最大の天体サーベイデータ公開
【2026年8月18日 NSF国立光赤外天文学研究所】
現在の天文学では、遠方の銀河を大量に観測して宇宙の3次元地図を作るプロジェクトがいくつも進んでいる。その大きな目的の一つは、銀河の分布や銀河像の重力レンズ効果を解析することで、宇宙の全エネルギーの7割以上を占める「ダークエネルギー」の正体を探ることだ。
そんな大規模サーベイの一つに、米・キットピーク国立天文台(KPNO)のメイヨール望遠鏡(口径4m)で行われている「DESI(ダークエネルギー分光装置)」サーベイがある。DESIサーベイは当初計画された5年間のサーベイ観測を2026年に完了し、全天の約1/3の領域にある約4700万個の銀河やクエーサーの距離を分光観測で決定して、これまでで最も詳しい宇宙の3次元地図を作った。5年間のデータに基づく詳しい科学成果は2027年に発表予定で、観測自体は2028年まで継続される見込みだ。

DESIの5年間のサーベイで得られた宇宙の銀河の3次元分布。中心に私たちの天の川銀河があり、約4700万個の銀河やクエーサーの位置と距離がプロットされている。黒く欠けている部分は地球から見て天の川と重なるために観測していない領域。画像クリックで表示拡大(提供:DESI Collaboration and DESI Member Institutions/DOE/KPNO/NOIRLab/NSF/AURA/R. Proctor, Image Processing: M. Zamani (NSF NOIRLab))
このDESIサーベイでは、関連プロジェクトとして「DESIレガシー撮像サーベイズ(DESI Legacy Imaging Surveys、以下レガシーサーベイズ)」が行われている。こちらはDESIで分光の対象にする銀河やクエーサーを選ぶための基礎データを集めるもので、全天のうち天の川部分を除いたなるべく広い範囲を、可視光線から近赤外線まで、複数の波長で撮像することを目指している。
レガシーサーベイズではこれまで、10回にわたって観測データをリリースしてきた(参考:「全天の3分の1をカバー、10億個の銀河マップ」)。レガシーサーベイズのデータを引用した論文は1800編以上発表されている。
「レガシーサーベイズのデータは今や、天文学研究の構造の一部となっています。現在、天体を扱う場合には、まずレガシーサーベイズビューアを開いて、自分が何を見ているのかを確認することから始めることがよくあります」(米・ローレンス・バークレー国立研究所 デビッド・シュレーゲルさん)。
レガシーサーベイズは、以下の3つのサーベイプロジェクトのデータからなる。
- DECamレガシーサーベイ(DECaLS)
- 米・セロトロロ汎米天文台のブランコ望遠鏡(口径4m)に設置された「ダークエネルギーカメラ(DECam)」で撮影。DECamは元々、南天の大規模撮像サーベイ「ダークエネルギーサーベイ(DES、2013~2019年)」のために開発されたカメラ。
- メイヨールzバンドレガシーサーベイ(MzLS)
- KPNOのメイヨール望遠鏡で撮影。
- 北京・アリゾナスカイサーベイ(BASS)
- KPNOのボック望遠鏡(口径2.3m)で撮影。米・アリゾナ大学スチュワード天文台と中国科学院国家天文台の共同プロジェクト。

DESIレガシー撮像サーベイズの一部として、セロトロロ汎米天文台のブランコ望遠鏡とDECamで撮影された、しし座の銀河M96。レガシーサーベイズでは、このような天体が約40億個とらえられている(提供:DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE & KPNO/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA, Image processing: M. Rodriguez (Gemini Observatory/NSF NOIRLab), J. Miller (Gemini Observatory/NSF NOIRLab), T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF NOIRLab) & M. Zamani (NSF NOIRLab))
今回レガシーサーベイズのチームは、DECamで撮影された新たなデータや赤外線観測衛星「ネオワイズ」による撮影データも追加して、第11次データリリース(DR11)を公表した。DR11がカバーする範囲は全天の約75%に達し、恒星・銀河・超新星・重力レンズ像など、約40億個の天体が含まれている。観測波長はg, r, i, zの4バンドだ。

DESIサーベイの観測を行っているセロトロロ汎米天文台。手前のドームがブランコ望遠鏡。チリ北部のセロトロロ山頂(標高2200m)に位置し、アリゾナ州のキットピーク国立天文台とともに、NSF国立光赤外天文学研究所(NOIRLab)の一部となっている(提供:CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/T. Matsopoulos)
今回のデータは、DESIサーベイの基盤となるだけでなく、ベラ・C・ルービン天文台やNASAの「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡」のような新世代の望遠鏡の観測データと比較する対象としても重要な役割を果たすだろう。また、ペタバイト級の大規模天文データを解析するAIシステムを構築するための学習データとしても、きわめて有用だ。
〈参照〉
- NOIRLab:Scientists Release Biggest 2D Map of the Universe
- DESI Legacy Imaging Surveys:Data Release 11
〈関連リンク〉
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