火星周回1000日目を迎えた探査機「メイブン」
【2017年6月21日 NASA】
NASAの火星探査機「メイブン」は2013年11月に打ち上げられ、2014年9月から火星の周回探査を行っている。「メイブンは、火星の上層大気が太陽と太陽風から受ける影響や、上層大気そのものに関して数多くの発見をしています。メイブンのおかげで、現在の大気のふるまいだけでなく、時間経過とともに火星の大気がどのように変化してきたのかについての理解が深まりつつあります」(メイブン主任研究員 Bruce Jakoskyさん)。
先週6月17日でメイブンは、火星周回軌道上で(地球の)1000日目を迎えた。これまでの成果のトップ10を紹介しよう。
10位:大気中の一酸化窒素とオゾンの分布をとらえ、両ガスの予想外に複雑なふるまいを明らかにした。この発見により、下層大気と上層大気の間で複数でダイナミックなガス交換プロセスが起こっていることが示された。
9位:太陽風の一部の粒子は、火星の電離層の影響で惑星周囲に逸れることなく、上層大気の奥深くまで入り込めることがわかった。電離層内で帯電した粒子が中性原子に変化する反応が起こることが原因である。
8位:火星の電離層内に金属イオンの層を初めて直接観測した。この層は惑星間空間に存在する微細な粒子が大気にぶつかることで発生しており、常に存在する。2014年10月には火星に彗星が大接近し、彗星から放出された塵によって金属イオン層が一時劇的に変化した。
7位:陽子オーロラと拡散オーロラという、2種類の新しいオーロラの存在を確認した。両オーロラは、地球のような全球的、あるいは局所的な磁場とは関係がない。
6位:上述の2つのオーロラは、異なるタイプの太陽嵐から放出される粒子の流入によって引き起こされていることを明らかにした。これらの粒子が火星大気に衝突すると、ガスの流出率が10倍以上に上昇する。
5位:太陽風と火星間で起こっている相互作用の複雑さを示した。火星に固有磁場がなく、一方で磁化した地殻の小さい領域があちこちに存在し、太陽風に局地的に影響を及ぼしている結果といえる。相互作用により生じた磁気圏は短い時間スケールで変化する。
4位:上層大気内の水素の変化を全季節を通じて観測し、年間で10倍ほどの差が生じていることを確認した。水素は低層大気内の水が太陽光によって分解され供給されている。
3位:上層大気内の同位体の計測をもとに、どれほどの量のガスが失われてきたかを明らかにした。計測によると、これまでに3分の2以上が宇宙空間へと逃げ出してしまっている。
2位:太陽と太陽風によって火星の最上層大気から現在はぎ取られているガスの、宇宙空間への流出率を計測した。同時に、ガスのはぎ取りプロセスの詳細を明らかにした。その結果をもとに、太陽からの紫外線と太陽風が現在よりも強かった過去にさかのぼって損失率を推定し、長い年月の間に大量のガスが逃げ出していったことを示した。
1位:太陽と太陽風の影響で火星大気がはぎ取られてきたため、かつて火星に存在していた温暖で湿った環境が変化し、現在見られるような冷たく乾燥した環境となったことを明らかにした。
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