マーズエクスプレス、火星の衛星と土星を撮影
【2018年3月8日 ヨーロッパ宇宙機関】
火星には2つの衛星「フォボス」と「ダイモス(デイモス)」が存在する。様々な探査から衛星の大きさや外観などの情報が得られているものの、その起源や形成過程、表面の物質といった点ではわからないことも多く、好奇心をかき立てられる天体だ。
2003年に打ち上げられ同年末に火星に到着したヨーロッパ宇宙機関の探査機「マーズエクスプレス」は、14年以上にわたって火星やフォボス、ダイモスの探査を続けている。火星の両極上空を通過するような楕円軌道で周回探査を行っているマーズエクスプレスは、衛星フォボスに周期的に150km以内まで大接近して観測することが可能という利点がある。
次の動画は2016年11月に、マーズエクスプレスが高解像度ステレオカメラを使って撮影したフォボスの画像30枚をつなげたものだ。フォボスが移動していく様子がわかるが、上方に小さく土星もとらえられている。このとき土星までは約10億km離れていたが、環があるのもわかるだろう。こうした画像を撮影するには、土星や背景の星々に対する衛星の位置を精確に知る必要があり、マーズエクスプレスの探査などによって数kmの精度で位置が計算されている。
マーズエクスプレスの探査では、フォボスの表面がでこぼこした不規則なものである様子も詳細にとらえられており、直径9kmの「スティックニー・クレーター」もよくわかる。スティックニー・クレーターの大きさはフォボスの直径26kmの約3分の1もあり、母天体に対する大きさの比が太陽系内で最大級の衝突クレーターだ。
もう一つの衛星ダイモスと土星の2ショット画像も公開されている。ダイモスの直径は約6.2kmでフォボスよりもさらに小型の衛星だ。
将来にはフォボスからサンプルを採取して地球へ持ち帰るミッションも計画されているなど、フォボスとダイモスは今後も探査対象として重要な天体だ。またフォボスは火星に近く、常に同じ面を火星に向けていることから、火星の表面や大気を長期的にモニタリング観測する場所として最適と考えられている。マーズエクスプレスは、こうしたミッションの準備にとって重要となる衛星の位置、表面、地形の組成に関するより良い理解を目指して、今後も観測を続けていく。
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