ハッブル宇宙望遠鏡、打ち上げ28周年
【2018年4月26日 HubbleSite】
ハッブル宇宙望遠鏡(HST)は1990年4月24日に打ち上げられ、これまでの28年間で地球を16万回以上周回しながら、150万回以上の観測で4万個以上の天体を観測してきた。太陽系内の天体からはるか遠方の銀河まで観測対象は多岐にわたっており、科学的に貴重で重要なデータだけでなく様々な天体の美しさや面白さも私たちに届け続けている。
このたび打ち上げ28周年を記念して公開されたのは、今年2月にHSTが撮影した干潟星雲の画像だ。いて座の方向4000光年彼方に位置する干潟星雲は幅55光年、高さ20光年の大きさに広がっており、この画像ではその一部である約4光年の範囲がとらえられている。
干潟星雲は明るく見やすいことから、アマチュア天文ファンにも観望や撮影の対象として人気の天体である。その一方で、大質量星の形成領域でもあることから、星の誕生と進化を研究するうえで興味深い研究対象でもある。
画像の中心には、星雲内で誕生した大質量星「ハーシェル36」が存在する。この星は太陽と比較して質量が32倍、直径が9倍と非常に大きく、表面温度は5万度近くに達し、結果的に太陽の20万倍もの明るさを放っている。誕生してからほんの100万年しか経っておらず、このあと約500万年で一生を終えると考えられている。太陽が現在約50億歳で今後さらに50億年輝くことを考えると、ハーシェル36は非常に若く、かつ短命だ。
こうした大質量星からは強い紫外線や猛烈な恒星風が放射されており、星を生み出した周囲のガスや塵を押しのけたり削ったりして、空洞や山のように見える構造を生み出す。一見すると星雲は平穏な場所のように見えるかもしれないが、実際には激しい環境にあり、絶えまなく変化が続いているのだ。
大質量星からの紫外線によって周囲の星形成は抑制されるが、そこから離れた暗く見える部分の端では、濃い塵やガスの内部で新しい星が形成されつつある。象の鼻のように見える暗い部分は物質が濃い場所で、紫外線によって浸食されにくく、赤ちゃん星が誕生する現場になる。
ハッブル宇宙望遠鏡トリビア
- 1990年4月24日にスペースシャトル「ディスカバリー」号で打ち上げ
- 口径2.4m
- 可視光線、近赤外線、紫外線で観測を行う
- これまでに実施した観測は150万回以上
- 調べた天体の数は4万3500個以上
- 28年間で地球を16万3500回以上周回
- 総飛行距離は約64億km
- 観測で取得されたデータ量は153テラバイト以上
- 観測データを利用した研究成果は1万5500件以上
〈参照〉
- HubbleSite:Hubble 28th Anniversary Image Captures Roiling Heart of Vast Stellar Nursery
- ヨーロッパ宇宙機関:Hubble celebrates 28th anniversary with a trip through the Lagoon Nebula
- NASA:Two Hubble Views of the Same Stellar Nursery
〈関連リンク〉
- HubbleSite
- アストロアーツ:メシエ天体ガイド
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー:干潟星雲
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