マーズ・オデッセイの観測により明らかになった火星の氷の存在
【2002年5月29日 JPL 2002 News Releases】
NASA JPL(ジェット推進研究所)の火星探査機マーズ・オデッセイの観測により、火星の南極付近の地下浅いところに大量の氷が存在していることが明らかになった。
氷が存在していることは以前から指摘されていたが、今回はその量が明らかになった。発表によると、地表1m程度の浅いところに、質量比で20パーセントから50パーセントの量を占める氷があるということだ。これは予想をはるかに上回る量である。
氷(もっと一般に水)の存在を明らかにしたのは、マーズ・オデッセイに搭載されているガンマ線分光器という装置である。この装置では水素から放射されるガンマ線の量を測定し、それによって水の量を推定できるというわけだ。また、水素によって中性子の量も影響を受けるが、中性子の量を高エネルギー中性子検出器や中性子分光装置といった装置を使って測定することでも、水素の量を見積もることができる。
これらの水素の強度からだけでは、水がどのような状態で存在しているのかまではわからない。しかし、観測された火星の南極付近はとても温度の低い領域であることから、観測された水素から存在が示唆される水は氷のかたちで存在しているのだろうと結論づけられたのである。氷が豊富に存在している層は、南緯60度付近では地表から60cmのあたりに、南緯75度付近では地表から30cmのあたりに分布しているようである。
一方、火星の北極付近はどうだろうか。現在火星の北極付近は、「極冠」と呼ばれる二酸化炭素の氷(ドライアイス)に覆われており、観測に向いていない。これから火星の北半球に夏がくれば、これらのドライアイスが溶ける。そうすればマーズ・オデッセイの観測によって、きっと北極地方にも多くの氷を見つけられるだろう。
これまでの研究から、火星にはかつて大量の水があったと考えられている。一体その水はどこへ消えてしまったのだろう。そして、水(氷)があるなら、生命の存在の可能性はどうだろうか。これらの謎を解明するためのデータを、マーズ・オデッセイは今後もたくさんもたらしてくれるだろう。
マーズ・オデッセイ :NASAの火星探査機。マーズ・パスファインダーに続く2機の火星探査が失敗に終わったことから、NASAの火星探査計画は大幅に組み変えられた。組み変え後の最初となったのがこのマーズ・オデッセイで、2001年4月7日に打ち上げられ、同年10月24日に火星周回軌道に入った。2003年10月に太陽嵐が原因で故障するまで、火星軌道からの観測を続けた。 (最新デジタル宇宙大百科より)<2005年7月29日更新分>