「太陽系の惑星の定義」への国内の対応始まる
【2006年9月5日 国立天文台 アストロ・トピックス(237)】
「惑星の定義」は国際的に決定したが、これに伴うさまざまな変更が一段落するまではまだ時間がかかりそうである。新しい用語の日本語訳を決定し、概念を整理するという大仕事に関係機関が乗り出した。
すでにアストロ・トピックス等でご紹介しましたように、2006年8月24日、国際天文学連合(IAU)総会において、太陽系の惑星の定義について決議がなされました。その結果、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星が惑星であり、冥王星および同種の天体はdwarf planetと呼ぶことが決まりました。dwarf planetなどの用語の日本語訳をはじめ、新しい定義に基づく概念や用語を整理していくことは、教科書などでの混乱を避けつつ、今後、広く社会に周知していく上で重要です。
このような状況の中、9月4日、日本学術会議IAU分科会長、日本天文学会理事長、日本惑星科学会会長の連名で、「情報提供」という形式で国内での当面の対応について方針が示されました。詳しくは日本学術会議ホームページ等で公開されていますが、その骨子は次のとおりです。
太陽系の惑星の定義に関して
平成18年9月4日
- 日本学術会議IAU分科会委員長 海部 宣男
- 日本天文学会理事長 祖父江 義明
- 日本惑星科学会会長 向井 正
8月24日、国際天文学連合(International Astronomical Union、以下IAU)は太陽系の惑星についての定義を決定しました。このことにより、たとえば冥王星は、惑星とは別種の天体であるdwarf planetに分類されることになりました。学校教育においても、教科書等での記述を変更する必要が生じます。
そこで、とりあえずの参考として以下の情報を私どもでとりまとめましたので、お送りします。各教科書や関連する出版・教材等での当面の対応において、活用していただければ幸いです。
- 新しい定義に基づく和名や概念などの整理については、日本学術会議物理学委員会のIAU分科会が日本天文学会、日本惑星科学会と協力し、教育関係者、公開天文台、科学館、アマチュア団体等とも連携して行う予定である。この検討には、半年程度かかると想定される。従って教科書などの変更も、最終的には2008年度にまでわたらざるを得なくなると思われる。
- 中学校理科教科書などで惑星の説明、表、あるいは写真の中に冥王星について言及した部分があり、2007年度教科書でその部分を削除する場合は、2006年8月にそう決定したことを書きしめすことが望ましいと思われる。もちろんこの場合は、太陽系の惑星は従来の9つではなく、8つとなる。
- その他、小惑星、彗星等の用語については日本での新たな扱いが確定していないので、2007年度教科書では、従前の表記のままとすることが望ましいと思われる。
- 高等学校教科書などでさらに詳しい記述について変更を行う場合は、太陽系内の天体に関する記述はIAUの定義に従わねばならない。ただし、dwarf planet、small solar system body、trans-Neptunian objectに関しては上記のように日本語の用語が確定していないので、取り扱いに注意が必要である。当面は英語名のままか、「仮称」と表記して記述することが望ましいと思われる。
以上
また、日本惑星科学会は、いち早く、8月26日に声明文を発表し、学会ホームページで定義の意味を詳しく解説しています。
日本天文学会も9月4日付けで理事長談話と決議に関する詳しい経緯について解説が発表になりました。
このように、今後、日本学術会議物理学委員会IAU分科会、日本天文学会、および日本惑星科学会が中心となって、教育関係者、公開天文台、科学館、アマチュア団体等とも連携して、新しい定義に基づく日本語名や概念などの整理が行われます。結果は半年程度で公開される見込みです。