地球磁気圏をめぐる問題に「審判」
5基の観測衛星、まとめて打ち上げ

【2007年2月16日 THEMIS Mission News

NASAは、まもなく磁気圏観測衛星テミス(THEMIS)を打ち上げる。美しいオーロラとやっかいな通信障害を引き起こす磁気嵐がどこから始まるのかをつきとめるため、打ち上げ後5つの探査機に分かれて別々に地球を周回するユニークな人工衛星だ。


ロケットの先端に格納された5基のテミスの写真

打ち上げに向けてロケットの先端に格納された5基のテミス。クリックで拡大(提供:NASA/George Shelton)

直線に並んだ5基の衛星の想像図

太陽の反対側に伸びた地球の磁力線と5基の衛星の想像図。クリックで拡大(提供:NASA)

THEMIS”は「サブストーム中のできごとや巨視的な相互作用の時系列(Time History of Events and Macroscale Interations during Substorms)」の略である。地球の外には巨大な磁気圏が広がっていて、その中には太陽風のプラズマやエネルギーが蓄積されているが、これが何らかのきっかけで解放されることによって磁気圏全体で起きる磁気嵐が「サブストーム」だ。サブストームは極圏に派手なオーロラをもたらしてくれるが、飛び交うプラズマは地上の機器や人工衛星に通信障害をもたらし、宇宙飛行士にとっては生命にかかわる重大な問題ともある。

しかし、広大な磁気圏のどこで、何がきっかけでサブストームが始まるのかについて研究者の見解はまとまっていない。「テミス」はギリシア神話に登場する正義と審判の女神の名でもあり、30年以上続く議論に「判決」を下してほしいという思いが込められている。

日本の最高裁判所でも目にすることができるテミスの像は天秤と剣を掲げている。一方、サブストームの広がり方をつきとめる任務を負った観測衛星テミスは打ち上げ後5基に分かれ、広い磁気圏の中へ展開する。それぞれの衛星は磁気や粒子、温度などを測定する25のセンサーを搭載している。5基の衛星は4日ごとに一直線に並び、地上に設置されたオーロラ観測基地などと連携してサブストームの全容解明を目指す。

テミスは16日(日本時間)に打ち上げられる予定だったが、天候不順などのため24時間後の17日午前4時過ぎ(米東部時間午後6時過ぎ)に延期されている。

磁気圏とオーロラ

地球は南極が磁石のN極、北極がS極になっている。磁力線は南極のN極を出て、地球の外側を通り、北極のS極から地球の中を通って元に戻るようにして地球を丸く取り巻く磁気圏を形成している。磁力線は、地球が太陽に向いている側は太陽風に押されるように変形し、地球の裏側の方では太陽風に押し流されたようにたなびいている。太陽風に押し流された磁力線の部分に補足された陽子や電子は、磁力線に沿って北極、南極から地球に流れ込んできて大気中の酸素や窒素を衝突することで発光する。これがオーロラだ。(150のQ&Aで解き明かす 宇宙のなぞ研究室Q.054 地球のバリアーってどんなもの?より抜粋 [実際の紙面をご覧になれます])