太陽観測衛星「SDO」がファーストライトの画像を公開
【2010年4月23日 NASA (1)/(2)/(3)】
今年2月に打ち上げられたNASAの太陽観測衛星「SDO」のファーストライト画像が公開された。活発に活動する太陽表面のクローズアップをはじめ、これまでに見たことのない太陽の姿がさまざまな波長で鮮明にとらえられており、地球に大きな影響を及ぼす太陽の活動のしくみを知るうえで画期的な役割が期待される。
今年2月11日に打ち上げられたNASAの太陽観測衛星「SDO」から、3月30日にファーストライト画像が届いた。今回公開されたのは、観測データを含む、16本の動画クリップと29枚の静止画である。これまでの太陽観測の中では、もっとも高い解像度であり、かつ短い間隔でとらえられた画像や映像に、研究者も初めて見る太陽の姿が詳細にとらえられている。
SDOには3つの観測機器が搭載されている。1枚目の画像は、そのうちの1つであるAIA(大気撮像部)がとらえたもので、波長ごとに色分けした合成擬似カラー画像だ。AIAは4つの望遠鏡群からなり、太陽の活動を探るうえで有用な10通りの異なる波長で、太陽の表面と大気を観測する。
2枚目の画像は、太陽フレアが発生中の太陽のX線画像と、フレア発生中にとらえられた極紫外線の光度変化である。EVE(極紫外線変動測定器)は、太陽から放出されるさまざまな高エネルギー粒子の変化を測定する。太陽からの放射は、直接地球の上層大気に大きな影響を及ぼし、温度上昇を引き起こして原子や分子を分解する。しかし、太陽の放射が波長ごとにどれくらいの速さで変化するのかはわかっておらず、太陽フレアの観測によってその変化のようすが明らかになることが期待されている。
3枚目は、HMI(日震磁気撮像装置)のデータから作成された太陽磁場の分布である。HMIは、太陽表面の波紋や磁場構造を観測し、フレアやコロナ質量放出(CME)を起こしている表面下の活動の仕組みを探る。ちょうど地球内部を探るために地震波を計測するのと同じように、内部活動によって生じた音波を検知して太陽の内部を探るのである。
4枚目は、SDOの解像度の高さを示したものだ。16メガピクセルのCCDによって、ハイビジョンテレビの10倍の鮮明さが得られ、小さな領域はもちろん、大気や表面、内部の活動に関連した変化など、太陽全体をモニターすることができる。しかも、その総合的な観測データをこれまでの太陽観測衛星よりも速く地球へ送信することが可能だ。AIAの主任研究員Alan Title氏は、「これまでは不可能でしたが、さまざまな箇所で起こる現象を関連付けることが可能になります」と話している。
SDOが初めて送信してきたデータについて、NASA太陽物理部門のRichard Fisher氏は「過去40年以上にわたる太陽研究で見たことのない、ダイナミックな太陽の姿を見せてくれました。ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が現代の宇宙物理学や宇宙論に変化をもたらしたように、SDOは、太陽活動や太陽物理における私たちの理解を変えてくれることでしょう」と話している。ちなみにSDOは、一日に1.5TB(テラバイト)という膨大な量のデータを送信することが可能で、これはざっと音楽のMP3ファイル50万曲分に相当する。
SDOは、今後約5年かけて、太陽の磁場が生成されるしくみや、磁場のどのような変化によって太陽風や太陽フレア、CMEなどの激しい現象が引き起こされるのかを調べる。また、SDOの観測データによって、宇宙天気予報の精度の向上も期待されている。
なお、SDOのファーストライト画像および動画は、以下の「参照」リンク先で見ることができる。