「あかり」がとらえた宇宙最初の星の光
【2011年10月25日 JAXA】
赤外線天文衛星「あかり」が、約134億年前の宇宙でできた第一世代の星の光を検出することに成功した。広い視野かつ複数の波長域で第一世代の星の光が確認されたのはこれが初めてで、宇宙初期における星生成活動の解明につながることが期待される。
2006年2月22日に打ち上げられ、約130万天体に及ぶ「赤外線天体カタログ」が作成されるなど、赤外線天文学に関する多くの成果をあげた衛星「あかり」(ASTRO-F)。今年6月に電力異常によりその科学運用は終了したが、「あかり」がりゅう座の方向の10分角(注1)の領域を観測したデータから、宇宙が誕生して3億年ほど経った頃にできた第一世代の星の光が残っているのが見つかった。
観測は2.4、3.2、4.1μm(マイクロメートル)の3つの波長域で行われた。何枚もの画像を重ね合わせ(画像1枚目(2))、手前の天体の光を取り除いた結果、空に光の揺らぎが存在していることが確認された(同(3))。ここからさらに天体として認識できないほど暗い銀河の影響を取り除くための画像処理を施した結果(同(4)、画像2枚目)、現在の宇宙の大規模構造(注2)に相当するスケールで光の揺らぎが存在していることがわかった。
この揺らぎは非常に大きなもので、他に考えられる原因(銀河系内の星の光や遠方の銀河の光など)では説明できず、3つの波長の画像の揺らぎのパターンやスペクトルから、遠方の青い星の光、すなわち宇宙第一世代の星の集団の分布によるものと結論付けられた。このことから、宇宙第一世代の星が誕生した約134億年前には既に宇宙の大規模構造ができあがっていたことが示唆される。
同様の観測はハッブル宇宙望遠鏡やスピッツァー宇宙望遠鏡などを用いて行われてきたが、観測領域や波長が限定的であった。背景放射の揺らぎという形で大規模構造を示すはっきりした画像が得られたのは今回が初めてのことである。
今回の結果は、ビッグバン直後のマイクロ波背景放射(注3)と宇宙最古の天体形成との間を繋ぐ「宇宙の暗黒時代」に、どのようにして第一世代の星が形成・進化してきたのか、またこのような大規模構造がどのようにして形成されたのかを探る上で、大きな手がかりとなりそうだ。
注1:「10分角」 1分角=角度1度の60分の1。満月の見かけの大きさがほぼ30分角。
注2:「宇宙の大規模構造」 宇宙は星や銀河がばらばらに存在しているわけではなく、銀河が多く集まっているところと、全く銀河が存在しないところとはっきり分かれているという、宇宙の構造のことを指す。
注3:「マイクロ波背景放射」 ビッグバンによる熱が現在では絶対温度に換算して3度に相当するマイクロ波(もっとも強い波長は約1mm)として観測される宇宙全体を満たしている光(背景放射)のこと。宇宙誕生から30万年後の様子を示していると考えられている。なお今回の観測とはその波長、領域の大きさとも全く異なるものである。