原始の水星、軽い接触で表面が削られた可能性
【2014年7月7日 アリゾナ州立大学】
誕生したばかりのころの水星が大型天体と比較的衝撃の少ない接触を起こし、外殻のマントルが削られたという可能性がシミュレーション研究で示された。従来の主流である「劇的な衝突」説の矛盾を解消する説である。
太陽のもっとも近くを回る惑星である水星は、総質量に対して65%もの割合を占める鉄の核を持つ(地球は32%)。その理由として主流の説は、原始惑星に起こった大規模な天体衝突により外側のマントルが失われたためというものであった。しかしこの説は、同時に失われるはずの揮発物質が水星に多く存在しているという観測結果との矛盾をはらんでいた。
米・アリゾナ州立大学のErik Asphaugさんらは、原始水星が他の原始惑星とかするように接触衝突するようすをコンピューターでシミュレーションした。その結果、衝撃の少ないこうした接触では、1、2回の衝突を経てマントルの半分はなくなっても揮発物質はじゅうぶん残り、現在のような水星の姿になることが示された。
太陽系の内惑星は20個の小天体が合体して成長し、最終的に多くが金星と地球に、残った2つが火星と水星になったと一般的に考えられている。シミュレーションでは、火星は他の大型天体に衝突しなかった。水星は、ほかの天体とかすり衝突はしたが、正面衝突で合体することはなかった。
今回の研究で、原始惑星は衝突のたびに合体して順調に大きくなるだけではなく、接触衝突で削られることもあることが示された。Asphaugさんは、こうした複雑なプロセスがあれば、水星や火星、小惑星のような“残り物”の天体に見られるバリエーション豊かな組成が説明できると話している。