2018年7月31日、約2年2か月ぶりに火星と地球が最接近します。約5760万kmまで近づき、2003年以来の大接近となります。この前後、夏から秋にかけては、天体望遠鏡で表面の模様を観察する好機です。
肉眼では2019年の初めごろまで明るく見えます。火星がいて座、やぎ座、みずがめ座と星座の中を動いていく様子は、いかにも惑星らしく面白い光景です。月や他の惑星との接近も楽しみです。
火星は惑星なので、星座の中を動いていきます。4月から5月中旬ごろ、火星は「いて座」の領域にあり、天球上を西から東へと「順行(じゅんこう)」しています。その後は「やぎ座」の領域へと移り、6月下旬の「留(りゅう)」以降は天球上を東から西へと「逆行(ぎゃっこう)」します。この逆行期間中、7月28日に「衝(しょう)」、7月31日に地球最接近となります。
8月下旬の「留」の後、火星は再び順行するようになり、11月中旬ごろに「みずがめ座」、12月下旬に「うお座」の領域へと移っていきます。
期間中の火星の動きや明るさの変化を、スケッチや写真で記録に残すと面白いでしょう。
2018年4月から12月ごろまでに起こる、火星と他の天体との接近現象などは以下のとおりです。このうち月との接近は、やや間隔は大きくなりますが前後の日にも見ることができます。土星や海王星、恒星などとの接近は、しばらくの期間中見られます。
日付 | 現象 | 備考 |
---|---|---|
4月上旬 | いて座の球状星団 M22と大接近 | 最接近2日ごろ |
4月上旬 | 土星と大接近 (›› 解説) | 最接近3日ごろ |
4月上旬 | いて座の2等星 ヌンキと接近 | 最接近10日ごろ |
4月 8日 | 月(月齢21)、土星と接近 (›› 解説) | 未明〜明け方 |
5月 6/7日 | 月(月齢20/21)と並ぶ | 未明〜明け方 |
6月 3日 〜 4日 |
月(月齢19)と接近 (›› 解説) | 深夜〜明け方 |
6月28日 | 留(りゅう) | この日を境に、天球上を東→西に動く(逆行する)ようになる |
6月30日 〜 7月 1日 |
月(月齢17)と接近 | 深夜〜明け方 |
7月27日 〜28日 |
月(月齢14、満月)と並ぶ | 宵〜明け方 28日明け方は皆既月食 |
7月28日 | 衝(しょう) (›› 解説) | 太陽の正反対に来る (深夜に南に見える) 黄道座標系では27日 |
7月31日 | 地球最接近 | 16時50分ごろ(日の入り前) |
8月23日 〜24日 |
月(月齢12)と並ぶ | 宵〜未明 |
8月28日 | 留 | この日を境に、天球上を西→東に動く(順行する)ようになる |
9月20日 〜21日 |
月(月齢11)と接近 (›› 解説) | 夕方から未明 |
10月18日 | 月(月齢9)と大接近 (›› 解説) | 夕方から深夜 |
11月上旬 | やぎ座の3等星 デネブアルゲディと大接近 | 最接近5日ごろ |
11月16日 | 月(月齢9)と接近 (›› 解説) | 夕方から深夜 |
12月上旬 | 海王星と大接近 (›› 解説) | 最接近7日ごろ |
12月10日 | 東矩(とうく) | 太陽から90度東に離れる (日没のころ南に見える) 黄道座標系では3日 |
12月15日 | 月(月齢8、上弦)と接近 | 夕方から深夜 |
2019年以降の現象については「現象ガイド」のページで順次ご紹介します。
火星以外の惑星にも注目してみましょう。金星は宵の明星として夕方の西の空に見え、宵空では木星が明るく輝いています。また、土星も見ごろを迎えるので、この夏は惑星観察の絶好の機会です。
惑星のほかにも月食や流星群など、楽しみな天文現象がいろいろ起こります。「アストロガイド 星空年鑑 2018」ではこうした現象の見どころや季節の星座を、書籍とDVD番組で詳しく紹介。さらに付属の天文シミュレーションソフト「アストロガイドブラウザ」で、現象の見え方や時刻などを調べることもできます。
iOS用の「iステラ」「iステラ HD」やアンドロイド用「スマートステラ」などのモバイルアプリを使うと、端末を向けた方向の空を画面にシミュレーション表示するので、火星のある方向や周りの星、星座の名前が簡単にわかります。日付を変化させて星座の中を動いていく様子をシミュレーションすることもできます。
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地球最接近となる7月31日の火星の見かけの大きさ(視直径)は24.3秒角で、同じ日の木星や土星(環を含めた長径)の約6割ほどです。また、75倍に拡大すると、肉眼で見た満月とほぼ同サイズになります。6月上旬から10月上旬までは火星の視直径が15秒角を超えており、口径10cm程度の天体望遠鏡でも模様が見やすいでしょう。
天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」を使うと、火星の模様の見え方や星空中の動きを正確にシミュレーションできます。火星が何時ごろどの方向に見えるか、どんな模様があるのか、位置や明るさの変化はどうなるのか、などを調べることができ、観測や撮影に便利です。太陽系を俯瞰した視点で眺めたり、火星に降り立って星空を見上げたりすることもできます。
また、「惑星テクスチャ機能」を使うと、オリジナルの火星の画像を星図に表示することができます。自分で撮影した画像や探査機のデータで火星を見てみましょう。
バーチャル火星儀ソフト「火星くるくる」でも、模様のシミュレーションや各種データの確認ができます。
惑星撮影の主流はCMOSカメラで動画撮影し、大量の画像をコンポジットして滑らかで階調豊かな像を得るという手法です。
天体画像処理ソフトウェア「ステライメージ」を使うと、撮影した火星の画像を手軽に美しい作品に仕上げることができます。火星や木星、土星の撮影と画像処理に挑戦してみてはいかがでしょうか。
月刊天文雑誌「星ナビ」では3号連続で火星や惑星を大特集。天体望遠鏡やカメラの選び方といった観察、撮影の実践だけでなく、火星探査の最前線や神話的観点からの解説もあります。深く知る楽しみや、違う視点からの情報の面白さを味わってみましょう。
アストロアーツのオンラインショップでは、天体望遠鏡などを多数取り扱っています。火星の模様を自分の目で観察してみましょう。ライトやクッションといった便利グッズ、火星儀などもあります。
火星に生命は存在するのか(過去に存在したのか)、液体の水はある(あった)のか、地形はどのように作られたのか、大気が薄いのはなぜか、2つの衛星フォボスとダイモスの起源は、…。惑星や太陽系の形成と進化(時間変化)といった科学的興味から、将来の人類の移住可能性という観点まで、火星は人々の心を引き付けてやまない惑星です。
約50年前の1960年代には早くもアメリカと旧ソ連が火星探査を始め、マリナー計画やバイキング計画によって詳しい地表の様子などが明らかにされていきました。現在はアメリカNASAの「マーズ・リコナサンス・オービター(MRO)」や「メイブン(MAVEN)」、ヨーロッパ宇宙機関の「マーズエクスプレス」、インドの「マンガルヤーン」などが火星を周回しながら探査を行っています。
周回軌道からだけでなく、地表に着陸した探査車による調査もこれまでに複数行われてきており、現在は2012年に着陸したNASAの「キュリオシティ」などが地表を移動しながら土壌調査などの探査を行っています。NASAの「インサイト(InSight)」やヨーロッパ宇宙機関とロシア共同の「エクソマーズ(ExoMars)」など現在進行中の探査も含め、今後も様々な発見や研究成果があることが期待されます。
火星の公転周期(太陽の周りを1周する期間)は約687日です。火星が太陽の周りを1周する間に地球は約2周します。この公転周期の違いから、2つの惑星は約2年2か月ごとに隣り合わせとなり、距離が近づきます。
この接近距離は、毎回異なります。火星の軌道は楕円形なので、軌道上のどこで地球と接近するかによって距離が大きく変化するのです(地球の軌道も楕円形ですが、火星ほどはつぶれていません)。今回(5760万km)のような大接近のときには6000万km弱まで近づき、反対に小接近のときには1億kmも離れます。
※接近の度合いは「大接近」「中接近」「小接近」などと表現されますが、明確な基準(使い分け)は決まっていません。