銀河団に落ち込む銀河の星形成が止まる理由

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銀河団に落ち込む銀河では星形成が急に止まることが知られており、その原因として複数のプロセスが考えられている。様々な年代の銀河の観測によると、最大の要因は、銀河団の高温ガスにより銀河内の星の材料が引きはがされることのようだ。

【2018年10月25日 W.M.ケック天文台

銀河の大集団である銀河団は、数百個から数千個もの銀河のほか、高温のガス、ダークマターから構成されている。その銀河団の中に銀河が落ち込む際に、銀河での星形成がかなり急激に止まることが知られている。「クエンチング」と呼ばれるこのプロセスが何によって引き起こされているのかは、はっきりとはわかっていない。

銀河の星の材料は、銀河内の冷たいガスであり、このガスが失われればクエンチングが起こることになる。ガスを失わせる要因としては、銀河団に存在する高温高密度のガスによって、銀河団に落ちてくる銀河内の冷たいガスが「引きはがされる」というプロセスが考えられる。

あるいは、銀河が銀河団内へ入ると、それ以上銀河に冷たいガスが補充されることがなくなり、銀河がある種の「窒息状態に陥る」というプロセスも考えられる。このプロセスの場合、クエンチングはガスの引きはがしよりもゆっくり進むことが予測される。

さらに別のプロセスとして、銀河の星形成のエネルギーによって銀河から冷たいガスが「流出する」ことも考えられ、この場合クエンチングはガスの引きはがしよりも速く進行すると予測される。

このように3つのプロセスは、異なる時間スケールでクエンチングが起こることを予測している。そこで、米・カリフォルニア大学リバーサイド校のRyan Foltzさんたちの研究チームは、宇宙の歴史の様々な年代で星形成が止まった銀河を観測することにより、クエンチングの主要なプロセスを解明する研究を行った。

銀河団「SpARCS J0035」
48億歳だったころの宇宙に存在する、ほうおう座方向の銀河団「SpARCS J0035」。ハッブル宇宙望遠鏡撮影(提供:Jeffrey Chan, UC Riverside)

Foltzさんたちは、赤外線天文衛星「スピッツァー」による観測で発見された大量の銀河団を調べ、銀河団に落ち込む銀河の星形成が止まるまでの時間は、宇宙が年老いていく(現在に近づく)ほど長くなることを明らかにした。銀河の星形成が止まるまでの時間は、宇宙が40億歳のころには11億年で、60億歳のころには13億年、現在(138億歳)では50億年かかる。

「遠方宇宙と近傍宇宙とで、銀河団内の銀河におけるクエンチングの時間スケールを比較した結果、窒息シナリオや流出シナリオよりも、引きはがしシナリオのようなプロセスのほうが、予測に合っていました」(Foltzさん)。

「ケック天文台やジェミニ南北望遠鏡が何夜にもわたって観測してくれたおかげで、銀河団内の最大規模の銀河で星形成が止まるプロセスを説明する良いアイディアが得られたと考えています。しかし、低質量の銀河では異なるプロセスによってクエンチングが起こるかもしれません。その疑問に答えるため、私たちのチームはすでに研究を進めています」(カリフォルニア大学リバーサイド校 Gillian Wilsonさん)。