H−IIロケット8号機のLE-7エンジンついに引き揚げられる

【2000年1月23日】

宇宙開発事業団は23日、1999年12月24日に発見されたH−IIロケット8号機の第1段メインエンジン「LE-7」のエンジン本体を、水深約3000mの海洋底より引き揚げたことを発表した。

回収は、サルベージの専門業者「新日本海事株式会社」に委託され、大深度からの引き揚げ経験のあるチームより作業が行われた。回収に際しては、アメリカのサルベージ会社「カツレフマリンサービス」所有の「Remora 6000」が潜行し、ワイヤを取りつけたあと、回収船「新日丸」のウインチにてエンジンが引き揚げられた。
 海域は波が荒く、回収作業は2日間遅れていたが、22日17時30分より回収作業を開始し、夜通しの作業のあと、23日9時00分にLE-7は無事回収船に引き揚げられた。水深約3000mの海洋底より1トンクラスのエンジンを引き揚げるのに、15時間30分かかったことになる。

宇宙開発事業団の発表ページでは、回収船に引き揚げられたLE-7エンジン本体の速報写真を見ることができる。また、引き続きノズルスカート等の引き揚げなどが予定されている。

また今月14日の発表では、H−IIロケット8号のLE-7の故障原因は、飛行中に液体水素ターボポンプ下流側の水素配管が外部開口したことにより、液体水素ターボポンプがストップし、プリバーナ下流部の破壊が起こった結果エンジンが急停止した、とのシナリオが現時点において最有力視されているとのことだ。

今後は、ターボポンプ単体での試験、コンピューターシミュレーション、センサーの動作テスト等を行い、最終的にはLE-7エンジン本体を使った燃焼試験を行うことが計画されている。
 この燃焼試験には、打ち上げられることなく終わったH−IIロケット7号機に搭載予定であったLE-7エンジンそのものが使われ、液体水素ターボポンプの定格作動運転領域を外れた性能限界テストが行われる予定だ。このため、構成部品が破損し、飛散することを防止するため、周囲に防護壁を新規に増設するなどの安全対策が取られることになる。
 燃焼試験は2月後半〜3月の予定。各試験の結果をみて、LE-7の後継エンジンLE-7Aでの対策の要否が検討されるとのことだ。

参考: H-II8号機第1段エンジン本体等の回収作業状況について
H-IIロケット8号機異常発生部位の特定に係る原因究明状況と今後の活動計画について【要約版】
- おしらせ 最新情報 運輸多目的衛星(MTSAT)/H-IIロケット8号機の打上げ宇宙開発事業団

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