ALMAに利用予定の世界最高性能の基準光源を開発
【2010年11月19日 情報通信研究機構】
情報通信研究機構(NiCT)と国立天文台は、国際望遠鏡プロジェクトであるアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA、アルマ)で使用する基準光源の開発に成功した。従来型に比べて飛躍的に向上した精度や安定度は、アルマの要求する厳しい条件をじゅうぶん満たしており、今後アルマの心臓部分として機能する予定だ。
一般に光を使った高速通信が身近になり、様々な分野における高速光信号の利用が進んでいる。複数のアンテナを連動させる電波望遠鏡もその1つだ。アルマでは最大18.5km離れた66台のアンテナを連動させるために、各アンテナで受信された信号のタイミング(位相)を精密にあわせて合成する必要がある。これを実現するためには、周波数が100GHzを超える高速の基準信号を、乱れを30万年に1秒以に抑えながら長距離伝える必要がある。そのためには基準信号源の高い位相安定度がきわめて重要で、もとになる信号は原子時計で作られる。
従来の銅線や導波管では離れたアンテナへの高速信号の伝送が困難なため、アルマでは高速信号を光にのせて伝えるファイバ無線技術を利用する。そのため、アルマの性能確保のために要求される安定性、周波数の範囲、精度の高さを実現する新たな光信号発生・伝送技術が必要とされていた。
情報通信研究機構と国立天文台は、情報通信研究機構独自の技術を利用して周波数の精度を保ったまま周波数の範囲を拡大する構成を提案した。国立天文台による制御機能と組み合わせ、世界最高性能の基準信号発生装置を共同開発し、100GHzを超える高速信号の長距離伝送が実現した。
開発された基準光源は、20GHzから120GHzまでの極めて広い周波数範囲の高速信号を、高精度を確保しながら安定して発生させることができる。この性能は、アルマの性能確保に必須とされる条件を満たすものであり、日米欧の国際協力で、南米チリの標高約5000mの高地に広がるアタカマ砂漠で建設が進むアルマの厳しい条件をじゅうぶん満たすもので、その心臓部分として機能する予定だ。
情報通信研究機構と国立天文台は、アタカマ砂漠における長期安定動作の確保を目指して、自動制御システムの開発を継続して行うことを計画している。