板垣さんと坪井さんが相次いで発見 超新星2011ekと2011em
【2011年8月10日 VSOLJニュース(276)】
8月4日、山形市の板垣公一さんと広島市の坪井正紀さんが相次いで超新星を発見した。坪井さんは先月の超新星2011ehにつづく今年2個目、板垣さんは今年3個目の発見になる。
VSOLJニュースより(276)
8月3日付けのVSOLJニュース(276)(天文ニュース 2011/8/5「坪井さんがおおぐま座の銀河に超新星2011ehを発見」)で暗めのIa型超新星2011ehについて紹介しましたが、それからの1週間で、Ia型超新星がさらに2個、日本の天文愛好家によって発見されました。2つの超新星は、距離は違うのに同じような明るさで見えています。近いほうが、超新星2011ehと同様、Ia型超新星のなかでも暗めのものだったからです。
1個目は、おひつじ座の方向20Mpc(メガパーセク)ほどの距離にある近傍の銀河NGC 918の近くに出現した超新星2011ekです。この天体は、山形市の板垣公一さんが8月4.77日(世界時、以下同様)に撮影した画像に16.4等で発見しました。天体の位置は、
赤経 02時25分48.89秒 赤緯 +18度32分00.0 秒 (2000年分点) NGC 918周辺の星図と、DSS画像に表示した超新星
で、渦巻銀河であるNGC 918の中心から西に27秒角西、北に133秒角にあたります。画像に写る腕よりもかなり外側です。同じ板垣さんの観測で、5.62日には16.0等、6.642日には15.8等と順調に明るくなっており、また分光観測によって極大前のIa型超新星と判明しています。スペクトルの特徴も、現在の明るさからも、この超新星は典型的なIa型超新星よりもかなり暗いものであると思われ、今後の追跡観測が楽しみです。
もうひとつの超新星2011emは、前記の超新星2011ekに比べると数倍遠くにあるにもかかわらず同じくらいの明るさで見えています。発見したのは広島市の坪井正紀さんで、超新星2011ehに引き続く発見になります。
坪井さんは、8月4.533日に撮影した画像で、16.8等で輝く新天体に気付きました。天体の位置は、
赤経 13時27分13.19秒 赤緯 +55度29分17.4 秒 (2000年分点) NGC 5164周辺の星図と、DSS画像に表示した超新星
で、おおぐま座にある棒渦巻銀河NGC 5164の中心から東に11秒角、北に3秒角にあたります。坪井さんの観測では、8.493日までの4日間で0.2等ほどの変動が報告されていますが、ほぼ極大に近いものと思われ、分光観測でも極大期のIa型超新星と判明しています。偶然とは言え、見かけの明るさは同じなのに、距離も正体も違うものが相次いで発見されたことになります。
今回の発見では分光観測も発見後すぐに行われました。特に、暗めの超新星2011ekは、その特異性と近距離であることから、くわしく調べられ新しい知見が大いに得られるものと期待されます。
超新星2011ekと2011emの位置
この天体を天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」で表示して位置を確認できます。ご利用の方は、ステラナビゲータを起動後まず「ツール」メニューから「データ更新」を行い、新天体データを取得してください。
また、オンラインで新しいデータや番組を入手できる「コンテンツ・ライブラリ」メニューでは、星図に一覧表示できる「板垣さんが発見した超新星」と「日本人が発見した超新星」も公開しています。あわせてお楽しみください。