超新星1987Aの残骸の磁場を検出
【2018年7月5日 トロント大学ダンラップ研究所】
超新星1987A(SN 1987A)は、16万8000光年彼方に位置する天の川銀河の伴銀河「大マゼラン雲」に1987年2月に出現した超新星である。最大で約3等級まで明るくなったSN 1987Aは、1604年に出現した「ケプラーの新星」以来の肉眼で見える超新星となった。
この超新星が出現してから約30年の間に、超新星爆発で吹き飛ばされた物質や星の最期に発生した衝撃波は、爆発前から星の周囲に存在していたガスや塵を通過して外側へと移動し続けている。現在、超新星の周囲に見られる直径約1光年のリング状の構造は、放出された物質や衝撃波が星の周囲にあった物質と衝突することにより光っているものだ。
西オーストラリア大学のGiovanna Zanardoさん、カナダ・トロント大学ダンラップ研究所のBryan Gaenslerさんたちの研究チームは、豪・ポール・ワイルド天文台のオーストラリア望遠鏡コンパクトアレイ(Australia Telescope Compact Array; ATCA)を使ってSN 1987Aの残骸の放射を調べることにより、初めて磁場の直接観測を行った。
「私たちは、冷蔵庫に貼りつけて使う磁石の5万分の1ほどの強さの磁場を、約17万光年彼方で測定することに成功しました」(Gaenslerさん)。「これは、大質量星の爆発後に形成された磁場を、可能な限り早い段階で検出したものになります」(Zanardoさん)。
明らかにされた超新星残骸の磁場は乱雑なものではなく、ある程度秩序だっており、自転車の車輪の中心から伸びるスポークのように整列していた。超新星残骸では時間が経つと共に、磁場が引き伸ばされて整ったパターンに整列することが知られているが、今回の観測研究により、爆発から30年という比較的短い期間で、超新星残骸の磁場が整列することが示された。
「超新星残骸が拡大し進化するにつれて磁場の形がどのような変化を見せるのか、今後も観測を続けたいと考えています」(Gaenslerさん)。
〈参照〉
- Univ.Toronto - Dunlap Insititue for Astronomy & Astrophysics:Astronomers Observe the Magnetic Field of the Remains of Supernova 1987A
- The Astrophysical Journal Letters:Detection of Linear Polarization in the Radio Remnant of Supernova 1987A 論文
〈関連リンク〉
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