原始惑星系円盤の隙間に2つの惑星を直接撮像
【2019年6月5日 HubbleSite】
惑星が木星やそれ以上の大きさにまで成長するためには、惑星の誕生現場である原始惑星系円盤から水素などを大量に惑星へと取り込む必要がある。こうした成長プロセスの証拠を探す研究が行われているが、中心星の明るさに阻まれるため、惑星を直接観測することは難しい。
オランダ・ライデン大学のSebastiaan Haffertさんたちの研究チームはケンタウルス座の方向約370光年の距離に位置する、太陽よりやや小さく軽い恒星「PDS 70」を、ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡「VLT」で観測した。PDS 70は約600万歳と若く、まだ周囲をガスや塵の円盤で取り囲まれている。また、円盤には、中心から30億~60億kmのところに大きな隙間が存在している。
PDS 70には2018年に系外惑星が1つ見つかっていたが(参照:「形成中の系外惑星の撮像に成功」)、Haffertさんたちの観測研究により2つ目の惑星が発見された。一つの惑星系で複数の惑星が直接撮像されたのは、ペガスス座のHR 8799系(4個)に次いで今回が2例目となる。
「これまでの様々な観測で、原始惑星系円盤に隙間や環が観測されてきましたが、そこに惑星が存在しているかどうかが問題でした。今回の場合、その答えは『YES』です。また、円盤に隙間を作っている最中の複数の惑星をはっきりと検出したという意味では、これが初の観測例です」(米・宇宙望遠鏡科学研究所 Julien Girardさん)。
2つのうち内側を公転する惑星PDS 70 bは、木星の4~17倍ほどの質量を持ち、中心星から約30億km(太陽~天王星くらい)と円盤中の隙間の内縁に近いあたりに位置している。もう一方の今回新たに発見された惑星PDS 70 cは木星の1~10倍ほどとbより軽く、中心星からは約50億km(太陽~海王星よりやや遠い)と隙間の外縁付近にある。また、2つの惑星は共鳴関係にあり、内側のbが2公転する間に外側のcが1公転する。
「新しい観測手法は、銀河や星団をより高い空間分解能で観測・研究するために開発されたものですが、その本来の目的とは異なる、系外惑星の撮像にも適したものです。2つ目の惑星を発見した時には驚きました」(Haffertさん)。
今回の成果は、形成中の惑星によって原始惑星系円盤に観測可能なほどの隙間が作られることを示す、直接的かつ重要な証拠となった。今後の研究でPDS 70を観測したり新たな複数惑星系を直接発見したりすることで、巨大ガス惑星の成長や原始惑星系円盤に関する理解が深まることが期待される。
〈参照〉
- HubbleSite:A Pair of Fledgling Planets Directly Seen Growing Around a Young Star
- Nature Astronomy:Two accreting protoplanets around the young star PDS 70 論文
〈関連リンク〉
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