鉄に富む小惑星表面の物質を高速衝突実験で確認

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鉄隕石に岩石の弾丸を高速衝突させる実験から、隕石表面に形成されるクレーターの表面が固化したケイ酸塩で覆われることが示された。鉄に富む小惑星の表面にケイ酸塩や含水鉱物が存在するという観測結果が自然であることを示す結果で、将来の小惑星探査計画にもつながる成果である。

【2019年9月24日 神戸大学

最近の鉄隕石の研究により、太陽系の形成後最初の100万年以内に、一部の微惑星の内部が地球型惑星のようにコア・マントル・地殻に「分化」し、その内部がケイ酸塩・金属鉄に分かれたことが示されている。こうした分化した小惑星は現在でも小惑星帯に残っていると考えられており、そのうちの一部は、激しい衝突によってマントルが剥ぎ取られコアがむき出しになっていることが、鉄隕石から示されている。

しかし、小惑星の観測からは、鉄隕石の供給源となるような鉄に富む天体は、鉄隕石の量や多様性に反してほとんど見つかっておらず、その原因は解明されていない。また、鉄に富むと考えられる小惑星の表面にはケイ酸塩や含水鉱物が存在することが観測から示唆されているが、その起源についての研究は進んでいなかった。

仏・コートダジュール大学/天文台のGuy Libourelさん、神戸大学の中村昭子さんたちの研究チームは、JAXA宇宙科学研究所にある超高速衝突実験施設の飛翔体加速装置を用いて、鉄鋼や鉄隕石のターゲットに対して岩石の弾丸を衝突させる実験を行い、ターゲットに形成されたクレーターの様子を調べた。

実験の結果、発泡したガラス質の皮膜、あるいは(油と水の混合物のような)鉄とケイ酸塩の不混和性液体が固化したものが、クレーターを覆っていることが観察された。また、スペクトルにはヒドロキシ基(OH基)や水といった揮発性物質の存在を示す3μm帯の吸収が見られ、揮発性物質を含む天体が鉄に富む小惑星に高速度で衝突しても、表面に固化したケイ酸塩層の中にこれらの物質が残ることが示された。

衝突実験で形成されたクレーター
(上左)鉄隕石としてよく知られる「ギベオン」に、「ダナイト」(かんらん石の一種)を、室温・秒速約7kmで衝突させて形成されたクレーター。(下左)上左のクレーターの電子後方散乱SEM(走査電子顕微鏡)画像。多くの気泡を含むガラス質(ピンク色)の被膜がクレーターの側面に見られる(緑色は鉄)。(上右)ギベオンに玄武岩を、摂氏約マイナス142度・秒速約5kmで衝突させて形成されたクレーター。(下右)上右に見られるクレーターの電子後方散乱SEM画像。玄武岩のようなガラス質(ピンク色)被膜の厚さは不均一で、泡状の構造が見られる(出典:Libourel et al. 2019)

これらの結果は観測で示されているような、鉄に富む小惑星の表面にケイ酸塩・含水鉱物が存在するのは、自然であることを確認するものである。

実験で形成されたクレーター部分の反射電子像
ギベオンにダナイトを衝突させてできたクレーター部分の反射電子像(左右で立体視できるように作られている)。クレーター内部では、岩石質物質の液体(暗い灰色)と微粒の鉄の液体(明るい灰色の球体)が混ざりあわずに分散した状態で固化している(提供:Brian May, Claudia Manzoni, and Guy Libourel et al.)

今後は衝突条件を変えた実験から、鉄に富む天体の表層が衝突によってどのように進化するのかについてさらに詳しいメカニズムが解明されると期待される。また、鉄に富む天体と考えられる小惑星プシケ((16) Phyche)の探査がNASAによって計画されており、この探査からも小惑星表面を覆う物質の組成や形態に関する詳しい情報が得られると期待される。

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