水星探査機「ベピコロンボ」、最初の水星フライバイ
2018年10月に打ち上げられた日欧共同の探査機「ベピコロンボ」が、最終目的地となる水星に初めて接近した。
同ミッションは2025年12月に水星周回軌道に入り、JAXAの水星磁気圏探査機「みお(MMO)」とヨーロッパ宇宙機関(ESA)の水星表面探査機「MPO」に分離する予定となっている。そこに至る旅路では、電気推進モジュール(MTM)のイオンエンジンと9回の惑星フライバイ(接近通過)で軌道を調整する計画だ。これまで2020年4月10日に地球フライバイ、2020年10月15日と2021年8月10日に金星フライバイを行っていて、残る6回はすべて水星フライバイである。
その水星フライバイの1回目が10月2日8時34分(日本時間)に実施され、探査機は水星の表面から199kmの高度を通過した。
ベピコロンボは水星の夜側でフライバイしたため、最接近の瞬間に撮影できる光景はなかったが、最接近の約5分後に高度1000km程度まで離れたころからモニターカメラが始動し、およそ4時間にわたって水星を撮影した。画像には、大きな衝突クレーターなどの地形が鮮明にとらえられている。「探査機から見たフライバイは完璧でした。ようやく目標の惑星を見ることができて最高です」(探査機運用マネジャー Elsa Montagnonさん)。
クレーターに覆われた水星の地表は月を思い起こさせるが、月と水星の歴史は大きく異なる。月は、原始地球に小天体が衝突したときの破片から誕生したという理論が有力だが、水星は逆に大衝突によって表面の岩石をはぎ取られてしまったという仮説がある。いずれにせよ、水星の地殻は薄く、鉄から成る核は比較的大きい。この金属核が作り出す磁場を調べることが「みお」の目的だ。フライバイという機会を活かして、「みお」とMPOの観測機器も稼働し、水星の磁場や周辺環境を調べている。
次の水星フライバイは2022年6月23日の予定だ。
〈参照〉
- ESA:
- ESA - Mercury Transfer Module Twitter:Mercury Flyby Soon (1日23時47分)
- 水星磁気圏探査機「みお」Twitter:
- もうすぐ水星磁気圏に入るんだね! (2日7時35分)
- 他の写真もたくさん地球に届けたよ! (3日8時7分)
- 水星の高度200 kmを通り過ぎたときのわたしの側面の温度だよ! (3日9時34分)
〈関連リンク〉
- JAXA:
- 水星磁気圏探査機「みお」Twitter(@JAXA_MMO)
- JAXA相模原チャンネル:BepiColombo「みお」がついに水星へ接近!~第1回水星スイングバイ前夜祭トークライブ~
- ESA:BepiColombo
- BepiColombo arrival at Mercury timeline
- YouTube ESAチャンネル:BepiColombo first Mercury flyby
- 日本惑星学会:遊星百景 その14 - ~メッセンジャー探査機が発見した水星特有の不思議な窪地~(村上豪)
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