地球型惑星や水星型惑星の形成につながる中心星の組成
【2021年10月25日 すばる望遠鏡】
岩石惑星である地球に含まれるマグネシウム、ケイ素、鉄などの重元素の比率は、太陽における存在比とよく似ている。この傾向は太陽系内のほかの岩石惑星にも当てはまるが、水星だけは例外的に鉄の割合が多い。こうした岩石惑星と中心星の組成の関係は、太陽系外惑星にも当てはまるようだ。
恒星が生まれるとき、その材料の一部は周りを囲む原始惑星系円盤となり、惑星の材料となる。同じ材料から作られるので、岩石惑星と中心星の重元素の組成が似通うこと自体は予想できた。ポルトガル天体物理・宇宙科学研究所/ポルト大学のVardan Adibekyanさんたちの研究チームは、この事実を初めて観測によって確かめることに成功した。
Adibekyanさんたちは岩石型系外惑星のなかから、質量と半径が正確に測定されているものを21個選び出した。質量と半径からは惑星の密度がわかり、密度からは鉄の含有量も推定できる。さらに研究チームは各惑星の中心星をすばる望遠鏡などの分光器で観測し、元素の組成を精密に測定した。
その結果、岩石惑星の組成と中心星の組成に相関があることが初めて示された。つまり、中心星の組成から予想される原始惑星系円盤中の(重元素の中での)鉄の割合が多いほど、岩石惑星に含まれる鉄の割合も多い。ただし、両者は単純に等しいわけではなく、岩石惑星の鉄が多くなる傾向にある。また、水星のように飛び抜けて鉄の割合が多い高密度惑星が5つあった。
「地球型惑星の組成は、太陽系で知られていたのと同様に、中心星の組成と強く結びついていることがわかりました。そして、これらの惑星では中心星の組成、すなわち惑星のもとになった原始惑星系円盤の組成から予想されるよりも鉄の含有量が高いことが示されました。この高い鉄の組成は原始惑星系円盤における化学プロセスと惑星形成プロセスに起因するものだと私たちは考えています」(Adibekyanさん)。
太陽系の水星を含む、鉄の割合が過剰な惑星については、原始惑星の衝突合体による惑星形成のシミュレーションでも再現することができない。これらの惑星の形成過程はほかの岩石惑星と異なるのかもしれない。そのメカニズムがわかれば、太陽系の岩石惑星の中で水星が際立って高い密度を持つ理由も解明できそうだ。
〈参照〉
- すばる望遠鏡:岩石惑星の形成過程を左右する中心星の元素組成
- Science:A compositional link between rocky exoplanets and their host stars 論文
〈関連リンク〉
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