塵粒から巨大ガス惑星まで、成長の道筋を解明

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誕生直後の太陽系で、0.1μmサイズの微粒子が集まって直径数万kmの巨大ガス惑星になるまでの過程を統一的に説明できるシミュレーションモデルが初めて開発された。

【2021年11月25日 東北大学

太陽系における木星と土星のように、他の恒星の周りにも巨大ガス惑星が普遍的に存在することが、多数の系外惑星の研究からわかっている。ところが、従来の研究では恒星の周りに巨大ガス惑星が誕生する過程をうまく説明できていない。原始惑星が周囲のガスを急速に取り込んで巨大ガス惑星になるには、まず地球質量の10倍程度の固体核まで成長する必要がある。しかし、これまでのシミュレーションによると、粒子が集まって固体核を成長させる速度は遅すぎ、大きくなる前に周囲のガスによるブレーキで公転が減速し、中心星に落下してしまう。

惑星の材料となるダスト(塵)は元々大きさ0.1μm程度で、質量は約6×10-15gと極めて小さい。これが衝突合体を経て質量数g以上の小石になり、小石がさらに集まって微惑星、さらには原始惑星へと成長する。典型的な巨大ガス惑星である木星の質量は約1.9×1030gで、ダストとの間には40桁以上の質量差がある。この文字通り桁違いの質量進化を単独のシミュレーションで扱うのは難しい。

巨大ガス惑星形成の概念図
巨大ガス惑星形成の概念図(提供:東北大学リリース、以下同)

従来の代表的な研究手法は、微惑星から固体核に成長する過程だけに注目する「微惑星集積モデル」だが、このモデルでは固体核の成長が遅すぎるため、小石が直接集まって固体核を作る「小石集積モデル」も考案されている。小石まで成長した天体はガスの抵抗で徐々に内側へ落下するので、原始惑星自身も落下しつつ効率的に小石を集め、十分な質量に成長できる可能性がある。しかしこのモデルにも、ほとんどの小石が先に中心星へと落下して無駄になるという弱点が存在した。

名古屋大学の小林浩さんと東北大学の田中秀和さんは、ダストから巨大ガス惑星までの成長過程を、途中の段階を省くことなく統一的に取り扱うシミュレーション法を開発した。

小林さんたちのシミュレーション結果によれば、ある程度中心星に近い(現在の太陽系の土星軌道より内側の)天体はダストから微惑星まで成長し、微惑星同士の衝突合体で原始惑星ができていく。ここまでは微惑星集積モデルと似ている。ここへさらに、小石集積モデルで考えられたように、外側からガスによるブレーキを受けた小石が移動してくる。小石集積モデルでは小石の大半はそのまま中心星へと落下してしまうが、統一モデルでは円盤の内側へ来た小石は微惑星へと成長し、大量の微惑星群が原始惑星へと取り込まれる結果となった。こうして、木星軌道のやや外側付近まで原始惑星が落下した辺りで質量が地球の10倍程度まで成長し、急速にガスを集める固体核になることができた。

今回のシミュレーション結果
今回のシミュレーション結果。太陽からの距離(横軸)に応じて、ダストから巨大惑星に至るまでの様々な質量(縦軸)を持つ天体がどれだけ分布しているかを色で表している

今回のシミュレーションは単に巨大ガス惑星の形成を再現するのみならず、現在の太陽系における惑星の位置もうまく再現できている。太陽系では、現在よりも内側で誕生した海王星が大きく外側へ移動したという歴史があったと示唆されている。その際、反作用で木星も内側へ移動したと見積もられる。固体核がガス惑星へと成長する領域は現在の木星軌道よりも外側だが、この移動を考慮すれば木星の位置は十分説明できる。また、土星の位置はまさに固体核が成長すると考えられる軌道だ。

木星のような巨大惑星がひとたび形成されれば、周囲の微惑星に大きな影響を与える。地球の海を形成する上では、木星の重力で軌道を変えられた氷微惑星の衝突が重要な役割を果たしたという説がある。そのため、今回の研究は巨大惑星のみならず、地球のような生命に適した惑星の形成を考える上でも重要になりそうだ。

また、太陽系以外の惑星系に関しても、原始惑星系円盤に含まれる固体成分の割合を変えることで、今回の統一モデルを使って説明できるという。

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