共鳴し合う6つ子の系外惑星

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約100光年彼方の恒星の周りに、隣り合う惑星の公転周期が簡単な整数比で表される共鳴軌道にある惑星6つが発見された。

【2023年12月5日 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部

かみのけ座の方向約100光年の距離に位置する8等星「HD 110067」は、太陽の約8割の質量と半径を持つ恒星だ。NASAの系外惑星探査衛星「TESS」の観測により、この星の周りを回る惑星が中心星の手前を通過する(トランジットする)ことによって起こったものとみられる複数の周期の減光がとらえられていたが、惑星総数やそれぞれの公転周期はわかっていなかった。

米・シカゴ大学のRafael Luqueさんたちの研究チームは、惑星の数とそれらの公転周期を明らかにするために、TESSのデータの分析や追加観測による検証を行った。

Luqueさんたちはトランジットの減光の深さと継続時間に着目し、TESSのデータに2種類の同じ形のトランジットのペアが存在することを見出した。これらトランジットの時間間隔から惑星の公転周期の候補を求め、その候補の周期で予想されるトランジットの時間帯に、ヨーロッパ宇宙機関の系外惑星観測衛星「ケオプス」で観測した。

その結果、2種類のペアのうち1つのトランジットが約20.52日周期であることが確認された。TESSの観測で、9.11日と13.67日周期の2惑星の存在はわかっていたが、この20.52日周期というのは、隣り合う惑星との周期比が2:3という簡単な整数比となる「尽数関係」にあることを示している(9.11×1.5≒13.67、13.67×1.5≒20.52)。太陽系では、たとえば海王星と冥王星の公転周期比が2:3で尽数関係だ。

尽数関係を持つ3つの惑星の存在は、惑星系形成時に複数の惑星が互いに尽数関係を持つ「共鳴軌道」にとらわれ、その関係を保ったまま、原始惑星系円盤中を現在の軌道まで移動してきたことを示唆している。つまり、トランジットを起こしている他の惑星の周期も尽数関係にあると考えるのが自然だ。こうして、20.52日周期に対して2:3の尽数関係にある、約30.79日の周期も見出された。

ここまでで4つの惑星の周期が同定されたが、TESSのデータには異なる形のトランジットがさらに2つ残っていた。研究チームは、5つ目の惑星の周期も約30.79日に対して尽数関係を持ち、6つ目の惑星の周期も5つ目の惑星の周期に対して尽数関係を持つと仮定し、50通りのシナリオを考えた。その中から、5つ目の惑星の周期は約30.79日に対して3:4となる約41.06日(30.79×1.33)、6つ目の惑星の周期は5つ目の惑星の周期に対して3:4となる約54.77日(41.06×1.33)である可能性が高いと考え、検証を行った。

2022年5月に実施された、複数の地上望遠鏡による5つ目の惑星のトランジットの追観測キャンペーンでは、多色同時撮像カメラ「MuSCAT」のチームがスペイン・テネリフェ島の「MuSCAT2」と米・マウイ島の「MuSCAT3」による観測を行い、5つ目の惑星の周期が約41.06日であることを確認した。さらに、解析対象外となっていたTESSのデータを精査し直し、5つ目と6つ目の惑星のトランジットが予想された時刻にあることも確認した。こうして、HD 110067に6個の惑星が存在し、それらの公転周期が尽数関係にあることがはっきりと示された。

6つの惑星の位置
発見された6つの惑星の位置。内側の4惑星の公転周期比は2:3、外側の3惑星の公転周期比は3:4の尽数関係にある(提供:Thibaut Roger/NCCR PlanetS、CC BY-NC-SA 4.0)

HD 110067の周りに見つかった6つ子の惑星は、半径が地球の1.9~2.9倍で、水素大気を持つ小さな海王星のような惑星と考えられている。研究チームは7つ目以降の惑星も探索を続ける予定だ。

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