土星の周りをまわる「でこぼこのスポンジ」:カッシーニが捉えた衛星ハイペリオンの姿
【2005年7月19日 JPL News Release】
土星探査機カッシーニによる、土星の衛星ハイペリオンの画像が公開された。
この画像は、6月9日から11日にかけてカッシーニが初めてハイペリオンに接近した際に捉えられた。同時に2日半に渡って撮影された25枚の画像による動画も公開されていて、ハイペリオンのでこぼこした形を様々な角度から見ることができる。これは、他の小天体の衝突により表面を削り取られた結果だ。
ハイペリオンは、同じ大きさの氷の塊に対して60パーセントの重さしかない。残る40パーセントにあたるのは、空洞と考えられている。スポンジのような外観通り、内部もすかすかというわけだ。大きさは、328×260×214キロメートルで、あともう少し大きければ自分自身の重力により押しつぶされ、内部の空洞が埋まり球形になってしまうというぎりぎりのサイズだ。だからといって、このでこぼこなスポンジはいつまでもこの形とサイズを保っているわけではなさそうだ。ハイペリオンの軌道は特殊な形をしているために、ある程度の速度で小天体に衝突されて表面物質をえぐり取られると、放出された物質はハイペリオンに戻ることなく、土星最大の衛星タイタンに引き寄せられるからだ。
この画像は、ハイペリオンから81万キロメートル〜170万キロメートルの距離で紫外線の波長で撮影されたもので、解像度は約1〜5キロメートル。次にカッシーニがハイペリオンへ接近するのは2005年9月26日で、ハイペリオンまでの距離約510キロメートルの位置を飛行する予定になっている。
なお動画は、NASA Multimedia Features: Encountering Hyperion(Movie)にて公開されている。
カッシーニ/ホイヘンス:NASAとヨーロッパ宇宙機関が共同で開発した土星探査機/衛星着陸機。1997年10月15日に打ち上げられた。2004年7月に土星系に到着し、数多くの衛星に接近、観測を続けている。ホイヘンスは、2005年1月14日にタイタンへの着陸に成功、表面の画像などを送ってきた。カッシーニ計画はNASAの重厚長大プロジェクトの最後のもので、総費用は4000億円となっている。なお、探査機の名は土星の輪の空隙や衛星を発見した天文学者カッシーニにちなんでつけられた。 (最新デジタル宇宙大百科より)