カッシーニ最新画像:タイタンの謎の斑点、
折れ曲がる土星の環、電波で捉えた環の細部構造
【2005年6月1日 JPL Cassini-Huygens News Release (1) / JPL Cassini-Huygens Multimedia Images (2) / (3)】
土星探査機カッシーニから届けられる最新画像の公開が相次いでいる。その中で、土星最大の衛星タイタンの赤外線観測で捉えられた謎の斑点、土星の大気による屈折で折れ曲がったように見える環、電波観測で得られた土星のリングの細部を鮮明に見せてくれる画像を紹介する。謎の多い土星だが、着実に新たな発見が増え、日々貴重なデータが蓄積されている。
タイタンに謎の斑点
赤外線による観測で、直径500kmほどの斑点が捉えられた。可視光、赤外線の両方で見ることができる斑点は、これまでこの衛星で発見されたどんな斑点よりもはっきりしていて、明るく、また時間と共に場所を変えることもない。
この斑点の原因については様々な説があげられている。たとえば、小惑星の衝突、火山活動(ただし吹き出すのはマグマではなく氷である)、表面のクレーターによって雲がとどまっている、さらには周りとは違う物質が表面を覆っている、などである。来年7月にカッシーニは再びタイタンに接近し、夜間にこの斑点を撮影する予定だ。もしそれでも輝いて見えるならば、この斑点が高温である証拠となる。
折れ曲がる土星の環
この画像では一見土星の環が折れ曲がっているが、これは土星の大気による見かけの現象だ。真空中と土星の大気中で光の進み方が異なるのでリングから発せられた光がカッシーニに届くまでに屈折したのである。これを空気と水に置き換えれば、地球上でもおなじみの現象である。土星の大気にはメタンが含まれるが、この画像はメタンに影響されない近赤外線を用いて撮影されており、他の波長による似たような画像と比べることで土星の大気についての情報が得られる。この画像は、今年4月14日に捉えられたもので、土星からの距離は19万7千キロメートル。画像スケールは、1ピクセルあたり、820メートル。
電波で捉えた環の細部構造
カッシーニによる初の土星の電波観測から、リングに存在する粒子の大きさなどが明らかにされた。公開された画像中のリングの色は、粒子の大きさを表している。5センチ以下の大きさの粒子が少ない領域が紫、5センチと1センチ以下の粒子が含まれる領域がそれぞれ緑と青に着色されている。写真で白く写っている領域は、粒子があまりに集まっているため電波による撮影ができなかった部分である。他の画像と合わせて考えると、どうやら土星の環は、どの領域も様々な大きさの粒子が集まってできていて、大きい物で数メートルになるようだ。
土星の衛星は、木星のガリレオ衛星のように飛びぬけて明るいものはない。しかし、10等前後のものが数多くあり、口径20cmクラスの望遠鏡なら5〜6個の衛星が土星の周りに見えて、ガリレオ衛星以外明るい衛星のない木星系よりにぎやかである。中でも8等のタイタンは土星系最大の衛星(半径約2500km)で、窒素成分の大気を持ち、生命存在の可能性が指摘される興味深い衛星である。(最新デジタル宇宙大百科より)<2005年7月4日更新分>