火星探査車スピリット、4度目の冬越えなるか
【2010年4月6日 NASA】
NASAは、これまで定期的に届いていた火星探査車スピリットからの通信が、3月30日に途絶えたことを発表した。火星の南極に本格的な冬が近づくにつれ、じゅうぶんな発電ができなくなり、冬眠モードに入ったようだ。移動能力を失いつつも、当初の予定を大幅に超えて生きながらえる探査車は、まもなくこれまででもっとも厳しい冬を経験する。
火星探査車スピリットは、これまでの数週間、週1回というサイクルで定期的に通信を行ってきた。しかし、通信が予定されていた3月30日、上空を周回する火星周回探査機マーズ・オデッセイが、これまでのようにスピリットからの通信を受信することはなかった。
通信が途絶えた理由についてプロジェクトチームでは、最近の発電量の低下からみて冬眠モードに入ったのではないかと推測しているが、同時に(可能性は低いものの)その他の原因についても調査を進めている。
冬眠モードでは、探査車の内部時計は動き続けるが、充電や探査車を暖めておくためのヒーターの稼動が優先され、通信やその他の活動は先延ばしにされる。数週間から数か月後に充電量がじゅうぶんになれば、探査車は目を覚まし、再びスケジュールどおりの通信を開始するようになるはずだ。
しかし、2004年1月に火星に着陸して以降、今回で4度目となる冬は、スピリットにとって相当厳しいものになりそうである。
スピリットは、冬の太陽がある北の方向に太陽電池パネルが向くように車体を傾けて過去3回の冬に備えてきた。が、今回はその備えなしで真冬に突入する。スピリットの車輪は砂に埋もれて動かず、車体の角度を変えることさえできないのである。6つの車輪のうち1つは4年前、もう1つの車輪は4か月前から使えなくなっている。
スピリットの核といえる電子機器は、今後数週間のうちに、これまででもっとも低い温度を経験するはずである。その温度は、設計上の耐寒温度や地上の検査で試された温度ほどは低くならないと予想されているものの、探査車の年齢を考えると、生き残りは確実とはいえないようだ。
双子の火星探査車スピリットとオポチュニティのプロジェクトマネージャーを務めるNASAジェット推進研究所のJohn Callas氏は、「限界温度は、新品の探査車を基準にしたものです。これまで火星上で温度の上がり下がりを何千回も経てきた老体の探査車に、これ以上の低温は、さらなるストレスになることでしょう」と話している。