太陽表面の地球側でコロナ質量放出、北米や欧州などで低緯度オーロラが出現か

【2010年8月4日 CfA (1)(2)SWC 宇宙天気情報センター

8月1日に太陽の表面の地球側でフレアが発生、続いてコロナから大量の物質が噴き出す「コロナ質量放出(CME)」が起こった。CMEが地球に到達すると磁気嵐が起き、北米やヨーロッパでは、低緯度地方でもオーロラが見られるかもしれない。


(「SDO」が8月1日にとらえた太陽のX線画像)

太陽観測衛星「SDO」が8月1日にとらえた太陽のX線画像。上の黒っぽい部分は、コロナ質量放出の一部として、表面から放出されたプラズマが作る構造。クリックで拡大(提供:NASA)

独立行政法人 情報通信研究機構(NiCT)のSWC宇宙天気情報センターの発表によると、8月1日の7時55分(世界時、以下同様)(日本時間 同日16時55分)に、太陽の表面でCクラス(※)の継続時間が長いX線フレアが発生し、10時頃にコロナから大量の物質が噴き出すコロナ質量放出(CME)が起こった。さらに、同センターでは、コロナガスが地球方向へ放出されたため、8月3日〜4日頃(日本時間 4日〜5日)に地磁気が乱れる可能性があるとしている。

NASAの2つの太陽観測衛星「SDO」と「SOHO」も、コロナ質量放出(CME)を観測した。

米・ハーバードスミソニアン天体物理研究所の研究者Leon Golub博士は「今回太陽表面で起きた爆発は、ちょうど地球の方を向いていて、(アメリカ東部夏時間)8月4日早朝に北半球に到達すると予測されています。久しぶりに地球側の面で起きた爆発です。SDOがとらえた画像も美しいのですが、もしかすると今後オーロラが発生して、わたしたちは、もっと美しい光景を見られるかもしれません」と話している。

CMEで放出された物質が地球に到達すると、地球の磁場に作用して磁気嵐が起きる。すると、プラズマが磁力線に沿って南北の極地方の上層大気に流れこむ。そのプラズマが大気中の酸素や窒素などの原子に衝突すると、ネオンサインのように光り、オーロラとして見られるのだ。

CMEは計4回発生し、すべて地球の方向へ向いていた。宇宙天気予報は地球上の気象予報よりもさらに難しく、Golub博士は「CMEは台風のようなものであり、いつも同じ速度で移動するとは限らない」としながらも、地球への到達時刻を以下のように計算している。

  • 米国東部夏時間8月4日午前3時(日本時間4日午後4時)
  • 米国東部夏時間8月4日午後1時(日本時間5日午前2時)
  • 米国東部夏時間8月4日午後8時(日本時間5日午前9時)
  • 米国東部夏時間8月5日午前2時(日本時間5日午後3時)

磁気嵐の間に発生するオーロラは、北米や欧州の低緯度地方でも見られるかもしれないが、Golub博士氏らの発表によると、いずれの時刻にも、オーロラは発生しないかもしれないという。それは、磁場方向などの条件が関係する。もし太陽からやってきたプラズマ中の磁場(太陽風磁場)の方向が地球の磁場と反対であった場合は、すばらしいオーロラとなる。しかし、太陽風磁場と地球磁場とが同じ向きの場合は、CMEは波紋1つ引き起こすこともなく、通り過ぎてしまう。

日本国内では、低緯度オーロラが見られるのは(一般論として)東北から北海道にかけての範囲で、2000年、2001年には北海道などで見られたが、その観望は肉眼では難しく、写真に撮って空が赤く染まることがある程度である(参照:ニュース「3月31日夜に北海道に低緯度オーロラが出現」(2001年4月3日))。今回のものも、日本から見られる可能性はかなり低そうだ。

※フレアの規模は、ピーク時のX線強度によって、A、B、C、M、Xの5つのクラスに分けられており、各クラスの大きさは、1桁ずつ異なる(例えば、XクラスはMクラスの10倍の強度である)。

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